圧倒的な人口の多さで発展する経済
2014年の年始に、インドネシアを旅した。
街の印象は、タイと似ている。地下鉄のないバンコクみたいな感じだった。風景は立派な大都会だったが、高層ビルはまだ少ない。治安も、あまり良くなかった。ちゃんとしたホテルには、自動小銃を持ったガードマンが常駐している。金属探知機もあって、出入りのタクシーのチェックもかなり厳しかった。東ティモールとつながっているので、常にテロの危険にさらされている国なのだろう。
しかしインドネシアも、経済は活況だ。政権安定をきっかけに、5年ほど前から目覚ましい成長を遂げている。規制緩和も導入されたのだろう。国内のビジネスは、どの分野もオープンな状況だ。
例えば航空業界。現在は14社ほどのエアラインが稼働している。その多くはLCC。インドネシア国内は飛行機移動が主体だから、サービスのあまり良くないLCCも人気だった。航空ビジネスは国内だけで6000億円規模のマーケットだという。
僕は現地の複数のベンチャー企業と、具体的にビジネスの話もしてきた。特にネット企業が元気だった。広告代理店なども軒並み好調だ。ネットビジネスならなんでもいける!という日本の1990年代の第一次ブームのような雰囲気だった。それはスマホの普及が後押ししているのだろう。
もともとブラックベリーが普及していた国なので、オンラインメッセンジャーのトップはWhatsApp。けれど、もうすぐLINEが抜く。街で見た感じ、若い人はみんなLINEユーザーだった。
人口:2 億5217 万人(世界4 位)、GDP:8886億ドル(世界16位)、一人当たりGDP:3524ドル(世界120 位)
インドネシアの経済発展を支えている要因は、人口の多さだ。
総人口は2億5000万人以上。ジャカルタ首都圏には4000万人が集中している。
平均年齢も若く、まだまだ成長の伸びしろを残している。あまり認知されてないが、人口的には日本の倍以上の巨大マーケットが存在する。中国よりも身近な大国なのだ。
現地の人は、総じて日本に好意的だ。東南アジアでは台湾やタイに次ぐ親日国だと思う。僕も滞在中にツイッターなどで、インドネシア語で声を掛けられた。日本人が移住したり、ビジネスで参入するハードルは、他の国に比べて低いだろう。
JKT48に加わった仲川遥香の英断
最近の日本のビジネスの成功例として有名なのは、AKB48 の姉妹アイドルグループJKT48 だ。ジャカルタに到着した夜、JKT48 のTEAMKⅢ公演を見に行った。劇場は日本のAKB劇場とまったく同じつくりで、建物もきれいだった。
そして、客席は超満員! 平日の夜だというのに、300人以上のキャパを埋めている。これはすごい。ステージのクオリティも高かった。日本での本家AKBのステージと比べても、遜色ないと思った。みんな色白の美形で、日本でも人気が出そうなぐらいかわいかった。
JKT48 は現在、CMやバラエティ番組に引っ張りだこだという。インドネシアへの進出直後は、肌を露出するアイドルはイスラム文化では受け入れられないのでは?など否定的な声もあったようだが、結果は大成功。アイドルグループとしては現在、インドネシア国内のナンバー2〜3ぐらいのポジションに上り詰めているという。
2012年にいち早くJKT48 に加わった仲川遥香は、最高の判断だったと思う。
AKB48 では多くのタレントに埋もれていたかもしれないが、いまはJKT48 を引っ張る主力メンバーとして活躍している。何より2億5千万人のマーケットで顔が売れているのだ。彼女のツイッターは現在118万フォロワーを超えている(2016年1月時点)。若いファン層が大人になったときも仲川を覚えているので、ジャカルタにいるうちは、各メディアで長年にわたり、起用され続けるはず。アイドルの生き方としては完全な勝ち組だろう。アイドルのサバイバル方法を先取った、成功者だ。先日、グループから卒業を発表したが、現地でタレント活動を続けていくという。
シンプルな話だが、アイドルは景気のいい国で求められる。東京で活動するのもいいけれど、一定のパイを奪い合っているだけで消耗する。一部のメジャーアイドル以外は、儲けるどころか生活を支えるのがやっとだろう。広告や広報ビジネスにお金が潤沢に回っている国なら需要は高い。まして黒髪・黒目・小柄・美肌の日本人美少女は、グローバル市場で相当に価値の高い、優良タレントだ。
アイドルは臆せず、どんどん出て行けばいいのだ。北京やシンガポールやバンコクや、好景気に沸く海外ならチャンスはふくらむ。リスクをとっても古いシステムから飛び出して、自ら動いた者が最後には勝つ。そんなビジネスのリアルをJKT48 に見た。
次回は4/1更新予定
激変する世界、激安になる日本。世界中を巡ってホリエモンが考えた仕事論、人生論、国家論。
はじめに 世界は変わる、日本も変わる、君はどうする
1章 日本はいまどれくらい「安く」なってしまったのか
2章 堀江貴文が気づいた世界地図の変化〈アジア 編〉
3章 堀江貴文が気づいた世界地図の変化〈欧米その他 編〉
4章 それでも東京は世界最高レベルの都市である
5章 国境は君の中にある
特別章 ヤマザキマリ×堀江貴文[対談] 無職でお気楽なイタリア人も、ブラック労働で 辛い日本人も、みんなどこにでも行ける件
おわりに