ロンドンのタクシー運転手の脳からわかったこと
集中瞑想と観察瞑想という2つの瞑想法を紹介しました。数回でも試していただければ、瞑想がリラックス効果だけでなく、仕事力全般の向上につながることが実感できると思います。
ここで気になるのは、瞑想で得られた効果がどのくらい持続するかです。いくら瞑想を続けてもその都度の効果しかなければ、疲れない脳をつくることにはつながりません。疑い深い人は、「仏僧が何十年も座禅や瞑想を続けるのは、そうしないと効果が消えてしまうからではないか?」と考えるかもしれませんね。この点についても、脳科学の分野から驚くべき研究結果が報告されています。それは、瞑想は脳の構造そのものを変化させるというものです。
その成果について紹介する前に、脳の「可塑性」ということをお話ししておきましょう。現代の脳科学では、脳には可塑性があることが明らかになっています。
「可塑性がある」とは「変わることができる」という意味です。つまり、脳の構造は生まれつき決まるものではなく、トレーニングを重ねることで変えることができるのです。
そのブレークスルーとなった研究は、ロンドンのタクシー運転手の脳に関するものでした。
ロンドンの道路は非常に複雑です。通りの数も2万以上あるといわれていて、交差点や横道も迷路のように入り組んでいます。実際に体験された方もいると思いますが、ロンドンのタクシー運転手は、目的地を伝えれば、この迷宮のようなロンドンのどこへでも、迷うことなく到着することができます。なぜならすべての道を記憶しなければ、タクシー運転手になれないからです。そのためロンドンのタクシー運転手になるための試験は「世界一難しい試験」ともいわれ、合格するには平均で4年間もかかるそうです。
いったい彼らの脳はどうなっているのか。
そんな疑問を持った研究者が、彼らの脳をfMRI(機能的磁気共鳴画像診断装置)で調べてみると、一般の人とくらべて顕著な違いがあることがわかりました。ロンドンのタクシー運転手は、一般の人よりも、記憶を司る「海馬」と呼ばれる部位が非常に厚くなっていたのです。さらに、ベテランになるほどその部位が厚くなっていることも判明しました。
この研究は、脳科学者に衝撃を与えました。というのも、それまでは脳が発達するのは生命の初期段階だけで、ひとたび構造がつくられれば、あとは退化するだけだと考えられていたからです。
ところがこの研究によって、大人であっても脳の構造を変えることができ、その働きを改善できることがわかったのです。
扁桃体ハイジャックを阻止せよ
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