買収よりバイアウトという言葉が適切だ
いまの日本人は傾向的に、保守化が進んでいる。成熟した先進国が保守化していくのは、歴史の過程で、必然の現象だ。経済的にも文化的にも、いったん「上がり」を経験した揺り戻しなのだろう。
それは世代単位の時間をかけて、やがて解消していくと思う。新しいものは、時間が経てばいずれ理解されて、受け入れられる。
だが、IT革命以後のグローバル社会において、自然解消を待つのでは遅すぎる。ひとつ新しいものを受け入れている間に、他のアジアの周辺国は3つも4つも、場合によっては10個ぐらい、先に取り入れてしまっている。グローバル社会では、「新しい試みは避ける」「現状をキープしたい」という保守の特性は、不利だ。
例えば先日、僕のオンラインサロンの法人会員の方にコンサルタンティングした。
その人は一度、会社を潰している。聞いてみると、過去に手がけたネット広告システムがスマッシュヒットして、楽天が会社ごと買収を提案してきたという。そのときバイアウトされていれば会社は潰れなかったのに、彼は断った。
いわく「買収されるって、世間的にイメージが悪いから」なのだと。つまり世間的には逃げというか、負けを受け入れるという判断だと、とらえている。結局リーマン・ショックが起きて発注が大幅に減り、負債を抱えこんで、会社を畳んでしまった。
買収は全然、いいことだ。「買収」という言葉がいけない。「バイアウト」という言葉が浸透してほしい。買収には、「会社を乗っ取られる」というネガティブなイメージがついてしまった。できれば買収は避けるべきという、間違った印象のせいで、彼のように大損害を被るビジネスパーソンが、けっこういる。