サンダースとヒラリーの政策はほぼ一緒
前回は共和党の「あぶない候補」ドナルド・トランプとテッド・クルーズについてご紹介した。今回は民主党候補の二人のちがいをなるべく簡単にご紹介しよう。
日本人だけでなく、多くのアメリカ人も誤解しているようだが、根本的には、ふたりの政策の間には大きな違いはない 。
ふたりとも、以下の考え方は一致している。
・現在の選挙資金の法を変える
・最低賃金を引き上げる
・違法移民が合法的な移民になる道を作る
・地球温暖化対策を推進する
・廉価の公教育に力を入れる
・ウォール街の金融機関が国民から搾取するのをストップする
・LGBTコミュニティと同性結婚を支持する
・人種差別には反対する
・国民全員が加入できる健康保険の実現を目指す
・収入格差を少なくして中流階級を蘇らせる
・TPPには反対の立場をとる
高騰する大学の授業料については、サンダースは「すべての公立大学を無料にし、そのコストをウォール街に払わせる」、ヒラリーは「公立大学のみでなく、私立大学でも授業料のローン(日本では奨学金と呼ばれる)の金利を引き下げ、就職してからの返済額は年収の10%でよい」という対策を掲げている。
どちらにしても、前回ご紹介した共和党候補の政策に比べれば、ごくわずかな違いだ。どちらが大統領になっても、議会を説得しているうちに妥協案に落ち着くことになる。だから、この差はそう重要ではない。
支持者は、政策ではなく、キャラクターとキャンペーンの違いで候補を選んでいる。
「救世主」オバマにアメリカ国民が失望した理由
サンダースとヒラリーの両者の違いを説明する前に、まずは背景となるアメリカ国民の世論を説明しよう。
共和党予備選でのドナルド・トランプの異様な人気と、民主党予備選でのサンダース旋風の背後には「収入格差」というアメリカの社会問題がある。以前にも書いた が、現在のアメリカでは、上位0.1%に属する少数の金持ちが持つ富は、下方90%が持つ富の合計と等しい。そして、70年代にはアメリカの過半数だった「中産階級」が消えつつある。
ジョージ・W・ブッシュの父であるジョージ・H.W・ブッシュ大統領から財政赤字を引き継いだビル・クリントン大統領の時代には、財政は黒字に転換し、ドットコム・ブームで若者にも高収入の就職先がたくさんあった。だが、ジョージ・W・ブッシュ大統領による減税、イラク戦争、ITブームの終焉で財政赤字と経常赤字は過去最高になり、サブプライムローンの不良債権化とリーマン・ショックの余波で多くの人が職と家を失った。
その暗い状況に現れたのが、「Change(変化)」を約束するバラク・オバマ候補だった。
群衆を興奮させ、国民によりよい未来を信じさせてくれるカリスマ性があるオバマは、まさに「救世主」のようだった。
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