幸せになる勇気

哲人は諭す。「尊敬とは『ありのままを認める』ことである」

尊敬とは「あこがれ」であると主張する青年。それに対して哲人は、「あこがれ」とは権威に怯える姿勢であり、本当の尊敬とは、「ありのままのその人を認めること」だと説きます。その理解の差異にこそ、教室が荒れた理由が潜んでいました。100万部を突破したベストセラー『嫌われる勇気』待望の続編『幸せになる勇気』より、第一部を特別掲載いたします。

「ありのままのその人」を認めよ

哲人 目の前の他者を、変えようとも操作しようともしない。なにかの条件をつけるのではなく、「ありのままのその人」を認める。これに勝る尊敬はありません。そしてもし、誰かから「ありのままの自分」を認められたなら、その人は大きな勇気を得るでしょう。尊敬とは、いわば「勇気づけ」の原点でもあるのです

青年 違う! そんなもの、わたしの知っている尊敬ではない。尊敬ってのはね、自分もそうありたいと請い願うような、あこがれにも似た感情のことを指すのですよ!

哲人 いいえ。それは尊敬ではなく、恐怖であり、従属であり、信仰です。相手のことをなにも見ておらず、権力や権威に怯え、虚像を崇めているだけの姿です。
 尊敬(respect)の語源となるラテン語の「respicio」には、「見る」という意味があります。まずは、ありのままのその人を見るのです。あなたはまだ、なにも見ていないし、見ようとしていない。自分の価値観を押しつけようとせず、その人が「その人であること」に価値を置く。さらには、その成長や発展を援助する。それこそが尊敬というものです。他者を操作しようとする態度、矯正しようとする態度には、いっさいの尊敬がありません。

青年 ……ありのままを認めれば、あの問題児たちが変わりますか?

哲人 それはあなたにコントロールできることではありません。変わるのかもしれないし、変わらないのかもしれない。しかし、あなたの尊敬によって、生徒たち一人ひとりが「自分が自分であること」を受け入れ、自立に向けた勇気を取り戻すことになる。これは間違いないでしょう。取り戻した勇気を使うか使わないかは、生徒たち次第です。

青年 そこは「課題の分離」だと?

哲人 ええ。水辺まで連れていくことはできても、水を吞ませることはできません。あなたがどんなに優れた教育者であろうと、彼らが変化する保証はどこにもない。しかし、保証がないからこそ、無条件の尊敬なのです。まず「あなた」がはじめなければならない。いっさいの条件をつけることなく、どんな結果が待っていようとも、最初の一歩を踏み出すのは「あなた」です

青年 しかし、それではなにも変わらない!

哲人 この世界には、いかなる権力者であろうと強要しえないものが、ふたつだけあります。

青年 なんです?

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幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

--- - "岸見 一郎" - "古賀 史健"
ダイヤモンド社
2016-02-26

この連載について

初回を読む
幸せになる勇気

岸見一郎 /古賀史健

『嫌われる勇気』から3年後、教師になった青年は再び、哲人のもとを訪ねる。「アドラーを捨てる」という、思ってもみなかった決意を胸にして。本当に「世界はシンプルであり、人生もまたシンプル」なのか。それとも「アドラー心理学」は現...もっと読む

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コメント

ironspring https://t.co/iFPfVD77Rc 1年以上前 replyretweetfavorite

mihokomidori 哲人「他者を操作しようとする態度、矯正しようとする態度には、いっさいの尊敬がありません」 著者: 岸見一郎 / 古賀史健『 2年以上前 replyretweetfavorite

komachibypass 昨日なんで立ち読みで号泣するほど刺さったのか、今となってはよくわからない(実際読んだのはもっと先の部分): 2年以上前 replyretweetfavorite

nocch その通りだと思う。 古賀史健 @fumiken /岸見一郎 https://t.co/zM1mQ5zGeZ 2年以上前 replyretweetfavorite