左:伊藤さん。障害を身体論的にアプローチする美学研究者。一児のお母さんでもある。
右:難波さん。中途失明の全盲者で鍼灸師。薬膳研究や合気道など幅広く活動している。
下:モナミちゃん。難波さんのパートナーをつとめる盲導犬。治療院「るくぜん」看板娘。
音で情報を集めることが生む可能性
—— 難波さんが視覚を失ったのは2007年のことですよね。いまネットやスマホが登場して、生活は変わりましたか?
難波創太(以下、難波) 日常生活ではパソコンに一番助けられてると思います。
伊藤亜紗(以下、伊藤) スマホのタッチパネルは、やっぱり目で見ないと使いづらいですか?
難波 最初はボタンがないから全然使えなくて、机の上の文鎮と化していました(笑)。
伊藤 文鎮(笑)。
難波 でも、周りの若い人に教えてもらいながらだんだん使うようになりましたね。画面を指で触ってると、アイコンのところに来るとアプリ名を読み上げてくれます。そこでポンポンとダブルタップするとアプリが立ち上がるという風に使っています。
伊藤 そういうふうにも使えるんですね。
難波 「タッチ」というより「まさぐる」という感じですね。テキスト入力はすごく苦手ですけど、アップルの製品はすべて、デフォルトで画面を読み上げる機能がついているのが素晴らしいです。とにかく自力で直接情報にアクセスできることが大事なんです。
伊藤 そうなんだ。
難波 フェイスブックのタイムラインのように大量に流れる情報を一覧して、自分に必要な情報をピックアップするのは、視覚ならではの機能ですよね。聴覚では、まずすべて聞いてから情報の取捨選択となります。大量の情報を処理することは苦手なんです。
難波 パソコンも文字を音声で読み上げるソフトが入っています。
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