海いきたいね」と彼女は言った

1999年、ボクはド底辺のお先真っ暗な二十代のガキだった。彼女とはいつも、ラッセンのジグソーパズルが飾られた円山町のラブホテルで過した。「地球滅亡しないかなぁ」とか言いながら――
フォロワー7万人超えのツイッター職人、燃え殻@Pirate_Radio_さんの一番長いつぶやきをお楽しみください。

「海いきたいね」それがあの頃の彼女の口癖だった。

 上野駅のホームで誤って彼女に送ってしまったフェイスブックの〝友達リクエスト〟。スマホをしばらくの間ジッと眺めていた。反応はない。ひとつ、ため息をついた。この感じは懐かしい。懐かしい痛みを心臓近くで感じている。彼女と一緒だった時、ボクはとにかくいつも待たされていた。

 どういう方法で攻めても結局、オセロの盤は一方的に彼女の色に染まってしまう関係だった。あの頃のボクは、円山町のラブホテルで彼女にへばりついて寝ている瞬間だけが、安心で満たされていた気がする。

 1999年の春。坂道のふもとにあったセブンイレブンで、ボンゴレパスタとポカリスエットを二人分買い込んで、あのラブホテルに向うのがいつもの定番コースだった。
 トイレにはどの部屋にもラッセンのジグソーパズルが飾ってあった。それを見て彼女は、トイレから出てきたら必ず「海いきたいね」と言っていた。

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ボクたちはみんな大人になれなかった

燃え殻

2016年まで生き延びた42歳のオッサンであるところの、ボク。1999年、ド底辺のお先真っ暗な二十代のガキであるところの、ボク。どっちもしょうもないけど、なんでだかあの頃が、最強に輝いて思える。夢もない、希望もない、ノーフューチャーな...もっと読む

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コメント

angelmikazuki |燃え殻 @Pirate_Radio_ |ボクたちはみんな大人になれなかった 過去の何かに似てたわけじゃない。ただとても懐かしい香りだと感じていた。 https://t.co/Bt4l6sMS9P 6ヶ月前 replyretweetfavorite

d_tanokami Cakes課金して最近寝る前にいつも読んでる。テキストが好き。#nerumaeの一言 8ヶ月前 replyretweetfavorite

gochi_is cakes、いままで読みたいものがいっぱいあったけど、燃え殻さんの言葉を聞きたいというのが決定打になった。研かれているはずなのに、懐かしいとも違う言葉たち。 約1年前 replyretweetfavorite

choku70 燃え殻さんのこれが読みたくてついにcakesに入会。 約1年前 replyretweetfavorite