お江戸の華は美少年!? 陰間茶屋案内記【前篇】

世界でもまれにみる平和な世、江戸時代。戦国では戦場で鍛えられた男色は、芸能や色町で艶やかな花を咲かせるようになった!?美少年版遊郭ともいうべき陰間茶屋にみなさんをご案内いたします。
劉邦の宦官』や『九度山秘録』で話題の、新進気鋭の歴史小説家・黒澤はゆまが、歴史のなかの美少年を追って世界中を飛び回る人気コラム!

陰間の語源とは!?

イスラーム、中世ヨーロッパと血なまぐさい話が続いたので、今回はガラッと雰囲気を変えて、舞台は江戸時代初期~中期にかけての日本!!タイムスリップした気分で、美少年版遊郭、陰間茶屋でパーッと遊ぶことにいたしましょう。

でも、そもそもこの陰間って言葉の意味は何なのでしょうか?

平安時代の伝説的武将、源義家のお稚児だった、鎌倉源五郎景政から来るという説もありますが、実際は茶屋に抱えられていた美少年の多くが、まだ修行中で舞台に立つことの出来ない「陰の間」詰めの歌舞伎役者だったからのようです。

日本の芸能史を振り返ると、白拍子の時代から、芸能と売春は切っても切れない関係にあり、男色においてもすでに鎌倉時代から猿楽の役者が色を売ることは行われていました。

猿楽を洗練させて、能という芸術にまで昇華させた世阿弥も、その美貌をもって、将軍足利義満から寵愛を受けた人です。そのため、能楽には、平家の美少年敦盛に対する熊谷直実の恋情がほのめかされている「敦盛」や、山伏と牛若丸が契る美しい場面のある「鞍馬天狗」など、男色的雰囲気のある演目が数多あります。

世阿弥は、その著作『風姿花伝』のなかでこう詠っています。

「少年の姿は幽玄の本質である」

この能楽を咀嚼し、万人受けする一大娯楽に発展させたのが、阿国の創始した歌舞伎でした。当然、少年愛の香りもまた、能から受け継いでいます。また、一度、成熟した妖艶な女性の肉体による解釈を受けたことも、歌舞伎の持つ男色的雰囲気をより妖しく陰影に富んだものにしたようです。

歌舞伎役者の紫帽子

阿国によりまずは女歌舞伎という形で始まった歌舞伎ですが、最初は筋書きなんてなく、単に綺麗な女性が男装して、茶屋の女と戯れる寸劇を演じるという他愛無いものでした。しかし、戦国の余風色濃く漂う安土桃山から江戸時代初期にかけて、大衆はまだまだ素朴でこんなものでも皆大熱狂。

しかし、風紀を乱すということで、1629年(寛永6年)幕府によって女歌舞伎は禁止。「女は舞台に立ってはいけない」という、きついお達しが出てしまいます。

しかし、庶民というのはしたたかなもの、

「女が駄目なら美少年がいるじゃん!!」

ということで、前髪立ちの美少年を女装させて舞台に立たせる若衆歌舞伎がはじまりました。これは女歌舞伎以上に人気を博し、黄色ではなく茶色い悲鳴をあげる男たちが、舞台には雲霞のごとく押し寄せました。

ところが、これも1651年(承応元年)「だから、風紀が乱れるって言ってんだろうが!」と幕府の逆鱗に触れ禁制。以後、前髪立ちの少年を舞台には立たせられなくなります。しかし、庶民はめげません。

「よーし分かった。前髪だな。前髪をそりさえすればOKなんだな」

ということで、前髪を剃った少年に、袱紗の紫色の帽子をかぶせて女形をやらせることになりました。これを野郎歌舞伎といいます。

また、少年たちがかぶせられたこの紫帽子は、

「チラチラ見え隠れするのがかえってたまらん」

ということで、フェティシズムを喚起し、女形の色気を返って高めることになったそうです。ボルテージをますますあげていく大衆の姿を見て、さすがの幕府もさじを投げたのか、以降あまりうるさいことは言わなくなりました。この野郎歌舞伎が、現在の歌舞伎の直系の先祖となります。

猥雑さを避けるために、衣服の形や面積を変えたり、身体を覆い隠そうとしても、何の意味もないということがよくわかる逸話ですね。

陰間茶屋の相場とは!?

ちょっと遠回りしてしまいましたね。さぁ、陰間茶屋のある色町に向かいましょう。

先述したように、この美少年版遊郭に囲われている少年たちの多くは、野郎歌舞伎でまだ舞台に立てない役者の卵でした。そのため、陰間茶屋の多くは、芝居小屋の近くにありました。江戸では、芳町、木挽町、湯島天神、塗師町代地、神田花房町などが有名で、なかでも最も上等と言われていたのが、芳町でした。現在の日本橋人形町周辺にあたり、歌舞伎の中村座や市村座が近くにあった場所です。

芝居小屋の見物も出来ることですし、私たちは芳町で遊ぶことにいたしましょう。

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洋の東西を問わず、戦乱の時代に決まって栄えた<少年愛>。死を賭して戦う英雄の側近くに控える、あるいは金髪の、あるいはブラウンの、あるいは黒髪の少年たち――。戦士は少年に何を求め、少年は戦士に何を答えたのか。時に英雄を生むこともあった、...もっと読む

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コメント

gibmirkuchen @4V70o5tyVzVsNDG 美少年を愛でるのは日本の文化だから、、、、、 (冷静に考えて確かに危ない気がしてきた) https://t.co/KnZ0AeKmrB https://t.co/hx0UQv4s0U 約1年前 replyretweetfavorite

poiuytrewq98761  影間による痴情沙汰は江戸時代でも危険になる率が高かった 故にその世界はカーストと身の引き方が重要だそう 4年弱前 replyretweetfavorite

persian_pardeis えっと、一両が十万円に相当し、一両が四分で、すると二時間で一分は二万五千円になるわけですね。(。´・ω・)? 平賀さん… 4年以上前 replyretweetfavorite

sabochin 面白い連載やってるじゃない…cakesは前ゲイビ監督と腐女子によるイベントみたいなのもやってたしいいね 4年以上前 replyretweetfavorite