部活動的な論壇との距離の取り方

最近、テレビ出演の依頼が増えて戸惑っているという武田砂鉄さんに対して、深澤真紀さんは武田さんのような存在こそ積極的にテレビに出るべきだと言います。出版界の人物がテレビに出るメリットとは何なのでしょうか?

「若手論壇」という部活動

武田砂鉄(以下、武田) 編集・物書き業界以外にはほとんど意識されてはいないとは思うんですが、どうやら「若手論壇」というのがありますね。

深澤真紀(以下、深澤) ありますね。

武田 誰がどこで規定しているのか知りませんが、自分も「若手論壇」の一人みたいな紹介をされたことがあって驚きました。『紋切型社会』という本では、そういう括りからどう抜け出るか、どう所属せずにいるか、ということを節々で意識的に書いてみたのですが、やっぱり参加させられてしまうものなのですね。

深澤 武田さんが言うように、「参加させられてしまう」んですよね。表に出る仕事をすると、どうしてもそういうことに接触する機会が増えていくから。
 武田さんが最近テレビに呼ばれるようになってるのもその流れで、古市憲寿や津田大介だけじゃない新しい人を探しているわけです。

武田 どうしたらいいんでしょうか。「いや、ちょっと、アレなんで」的な極めて曖昧な返事で断ったりしているんですが。

深澤 これからどんどん増えますよ。でもやってもいいんじゃない? まあ「私も苦しんでるんだから、お前も苦しめ」っていう気持ちもあるんですけど(笑)。

武田 お前も誤解されろ、ってことですか?

深澤 それもあるし、武田さんは若手論者の中でもやっぱりちょっと異質ですから、テレビで予定調和を壊してほしい(笑)。
 出版の人間がテレビに出るとわずらわしいこともあるけど、長く見てくれる人にはそれなりに解ってもらえるようになりますよ。私はもう6年くらいテレビに出ていますが、ずーっと「若者と女性を叩くな」って言い続けているから、「まあこの人はこういう思想の人なんだ」って思われるようになる。

武田 それ、わかってもらうというか、諦められている気もしますけど……。

深澤 諦めてもらうのも大事ですよ(笑)。「こういうこと言ってください」っていうテレビ側の無理なお願いに乗ってしまう人もいるけど、武田さんは別にテレビに出たいわけじゃないんだから、「いいたいことが言えないなら出ません」って、私がドラマの出演を断ったみたいに断ればいいだけだし。

武田 たとえば、『ニッポンのジレンマ』には、出た方がいいでしょうか。

深澤 出た方がよかったと思う。若手論壇にはもっと多様性が必要ですよ。

武田 自分が「株式会社 若手論壇」の経営者なら多様性を考えたほうがいいのでしょうが、わざわざ会社を辞めて一人でやってるのに、部活動に入り直すようなことはしたくない、とは思いますよね。そういう世界を、完全に外から見られているとも思いませんが、なんかこう、部活動で「おい、3年の先輩に挨拶行っとけよ」と2年の先輩から声をかけられるみたいな、そういう感じがしなくもない。中高時代、一番馴染めなかったものなので、それ。

深澤 おやじの論壇はそうだけど、若手論壇もそこまでタチが悪い?

武田 内情を知らないのでタチの良い悪いは分かりませんが、少なくとも、その部活動の新入りみたいに思われるのは避けたいですよね。部活動内で議論するよりも、学校にいる先生とブツかった方がやる気が出るじゃないですか。

深澤 あはは、わかります。私も女論壇に入ってないし、入れてもらえてないというほうが大きいんだけど(笑)。

武田 部活動内で揉め事があると、「論争」とかって言われたりするそうですね。ただの部活の揉め事だろう、と思ったりするんですが。

深澤 たしかに同じ部活の仲間だと思ってるから、ちょっとした炎上でもお互い味方し合ったりしてるのを見てるとうんざりすることはありますね。しかも彼らは仲間割れしちゃうことも多い。
 武田さんも書いてるけど、私も「会って話せばわかる」という思想が嫌いなんですよ。会えば多くの人はいい人ですよ、でもそれでその人の思想を許容するのは違う。だから会いたくない人とは会わなくていいと思っています。

武田 親密度が「その人を理解すること、知ること」になるとマズいですよね。「えっ、○○ちゃん? 知ってるよー。昔はよく奢ったもんだけど、あっという間に大きくなっちゃって」とか放言している古めかしい業界ゴロみたいなもので。学生時代に番組制作会社でADをしていましたが、そういうオヤジと沢山出会いました。

三文安くなってもテレビに出た方がいい理由

武田 で、話を戻しますと、テレビに出るってのは、名前を知ってもらうための効率的な選択肢というか、有効な手段なんですかね。

深澤 いや、それは誤解じゃないかな〜。

武田 あ、誤解なんですか。なぜそう思われるんですか。

深澤 出版界とテレビ界って、かなり断絶しているんですよ。テレビに出始めると、その人の本は売れなくなるとさえ言われています。テレビって基本的に“タダ”だから、タダで見られる人の本はわざわざ買わない。タレント本は別ですよ、あれはテレビ界の人が出版界に来ているわけですから。池上彰さんや又吉さんの「火花」は後者のタイプです。

武田 この人は「とくダネ!」でしょっちゅう見られる人の本だからわざわざ買わなくっていいや、と。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
共感しない、させない戦い方

武田砂鉄 /深澤真紀

「草食男子」「肉食女子」という言葉を生み出したコラムニスト・深澤真紀さんと、昨年ドゥマゴ文学賞を受賞し、cakesでは「ワダアキ考」でお馴染みのライター・武田砂鉄さん。元編集者であり、現在はさまざまな媒体で活躍するお二人が、現代におけ...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

kous37  テレビに出出すとその人の本は売れなくなる、という話が面白い。 3年以上前 replyretweetfavorite

2FSHIKA >テレビって基本的に“タダ”だから、タダで見られる人の本はわざわざ買わない。タレント本は別ですよ、あれはテレビ界の人が出版界に来ているわけですから。池上彰さんや又吉さんの「火花」は後者のタイプです。 https://t.co/3Hc6nOteWf 3年以上前 replyretweetfavorite

2FSHIKA >わざわざ会社を辞めて一人でやってるのに、部活動に入り直すようなことはしたくない、とは思いますよね。 https://t.co/3Hc6nOteWf 3年以上前 replyretweetfavorite

consaba 武田砂鉄+深澤真紀「自分が「株式会社 若手論壇」の経営者なら多様性を考えたほうがいいのでしょうが、わざわざ会社を辞めて一人でやってるのに、 4年弱前 replyretweetfavorite