企業では監督がフォワードやゴールキーパーをやってはいけない

社外取締役というと、企業にひとりふたりいる銀行からの出向の人、みたいなイメージはありませんか? 実は海外では取締役会のほとんどは社外の人たちになっているそうです。企業の幹部になぜそこまで外の人をいれているのでしょうか。そこにはとても合理的な意味合いがありました。


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〈ガバナンスの壁〉

海外では社内からの取締役は一人だけ

 米国の会社の経営に携わって、改めて実感しているのが、日本と海外の会社のガバナンス(企業統治)の違いです。ここに壁があると認識しておくことは、海外に子会社をもつ際に大きく生きてくるでしょう。
 最近、コーポレートガバナンスコード(上場企業の行動規範)の開始だけでなく、スチュワードシップコード(機関投資家側の行動規範)の開始や社外取締役の本格活用など、コーポレートガバナンス改革が日本でもキーワードになってきています。
 海外ではすでに、取締役会の構成は、取締役は社内から一人か二人、社外が大多数というのが一般的になってきています。CEOが一人と、残りは社外取締役、欧州やシンガポールでは、取締役会議長とCEOが分離されるのも一般的です。
 そして取締役会は、四半期に一度。三カ月に一回だけしかありません。日本では、取締役による経営会議が毎月ある会社も少なくありませんが、こんなことは海外ではありません。それこそ、そんなに頻繁に取締役会があったら、社外取締役は出席できないためです。
 しかし、日本人には少なく思える三カ月に一回の取締役会で、どうやって経営をしていくのか、どうやって管理を行っていくのか、イメージがまったくもてないという声を、日本で実際に取締役をされている方々からはよく聞きます。
 海外では英語で取締役会に関して話をする際には、「ボード」と「マネージメント」という言葉の使い方をしますが、「ボード」が取締役会、「マネージメント」が執行役員を示します。この両者が同じであることが少ないのです。 「ボード」が「マネージメント」の方向性を決める、「ボード」が「マネージメント」の判断に挑戦する、「ボード」が「CEO」と新しい方向性を議論する、ということがトピックになったりしますが、日本では、「ボード」=「マネージメント」=「CEOはその一部」なので、同じ議論をしたり、感覚をもつのが困難です。
 もとより、日本で行われている取締役会というのは、経営会議や幹部会と同じような感覚なのではないかと思っています。言葉を換えれば、現場に深く関わることが議論の中心になります。それこそ、現場に近い意思決定も含めて、取締役会で決議するので、毎月、開く必要があるわけです。
 海外の場合は、三カ月に一度決めればいいことだけに、議論すべき対象を絞っています。それこそ、一カ月スパンで決めなければいけないようなことは、いわば取締役の見るところではないということになります。取締役は、もっと大きな視点で経営を見ていくということなのです。

 例が極端で恐縮ですが、親が子どもの宿題を毎日見るようなガバナンスはしないのです。毎日ちゃんと宿題をやっていたところで、もしかすると子どもの能力の開発にはなっていないケースもあります。長期的に見たら、こういう方向性で取り組んだほうがいい、という考えは、毎日の宿題をチェックしている親には見えにくいもの。それより外から見たほうがわかるかもしれません。社外取締役には、そのような意味があるのです。
 むしろ、毎日、毎週は見ない。
 そうすることで、長期的な能力開発を意識することができます。こうした役割分担が、海外のマネージメントの発想です。そしてこれが、効果的に機能しています。

 コーポレートガバナンスは単なる株主へのパフォーマンスではなく、企業がどのように繁栄していくのかという真剣な取り組みであるべきです。
 取締役会並びに取締役は、株主のために正しいことをしているかを確認していくことが求められます。  海外でも、昔は今の日本のような取締役会の運営が行われていたようです。しかし、この二〇年で大きく変わってきました。
 取締役とは何なのか、改めて議論され、進化していったのです。そして、それが受け入れられていきました。なぜなら、このほうがうまくいく、結果が出せる、というプロセスを経てきたからでしょう。
 また、コーポレートガバナンスは、リーダーシップの変革ともいえます。
 企業が個々人のリーダーシップにより導かれるのではなく、組織によるリーダーシップで導かれる道があるのかどうか探るのが、つまり、取締役会を集合体として機能させられるかどうかということが前提のひとつになっています。

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世界の壁は高くない

鳩山 玲人
廣済堂出版
2015-11-26

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鳩山玲人

サンリオで海外戦略を担当。会社の営業利益が入社5年目で約3倍となり、常務取締役となった鳩山玲人さん。2015年、ハローキティをハリウッドデビューさせるための、社内ベンチャーのCEOに就任し、米国経済誌により「今まででもっとも成功したハ...もっと読む

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コメント

regista13 「興味深いのは、CEOを入れて行うディスカッションと、CEOを入れないで行うディスカッションがあることです」海外企業の社外取締役の役割全然違う 約4年前 replyretweetfavorite

fujinejima 宿題の例、分かりやすいな。→ 約4年前 replyretweetfavorite