二人の危ない共和党候補
今回は、本当はあまり危なくないドナルド・トランプと、実はとても危ないダークホース、テッド・クルーズの話をしたい。
左がテッドクルーズ、右がドナルド・トランプ(WSJより)
ウォール・ストリート・ジャーナルとNBCの最新の世論調査(2月16日発表)で、テッド・クルーズを共和党のファーストチョイスに選んだ人が28%と、26%のドナルド・トランプを追い抜いたことが話題になっている 。
これまでにトランプの差別発言を耳にしている人は、「よかった」と好意的に受け止めたのではないか。
だが、クルーズは、トランプよりずっと危険人物なのだ。
テッド・クルーズは、カナダ生まれでプリンストン大学卒、ハーバード・ロースクール(法律大学院)では「ハーバード・ロー・レビュー」の編集者を努め、優秀な成績で卒業した。司法省副次官、テキサス州の訟務長官などの経歴を経て、2012年から上院議員……という経歴だけを見ると、「トランプよりずっと大統領にふさわしい人物ではないか!」とほっとするかもしれない。
しかし、彼の主張を聞くとその考えも変わるだろう。
キリスト教右派の福音派であるクルーズは、保守の共和党のなかでも極めて過激な右派であり、「婚前交渉反対/純潔運動推進」「妊娠での女性の選ぶ権利反対」「LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の権利確立に反対」「進化論否定」「死刑存続」「銃規制反対」「国民皆保険反対」「障害者権利条約の批准阻止」を政策としてあげている。彼は、自分が大統領になったら、これらの政策を推す連邦の最高裁判事を任命することも支持者に約束しており、ここまで進んだ「女性の権利」と「LGBTの権利」などが、一気に半世紀前に逆戻りしてしまう可能性もあるのだ。
国際的にも、クルーズは「イスラエルとの同盟強化」や「イスラム国への軍事介入推進」、「自由貿易の促進」といったタカ派(強硬派)で、諸外国への影響も少なくない。
実は口ばかりのドナルド・トランプ
トランプの過激さについては、「荒唐無稽な大統領候補トランプ」でも述べたが、クルーズと比べると、トランプは、じつはさほど危険な人物ではない。 なぜかというと、彼の過激な発言は、じつは票を取るためのリップ・サービスにすぎないと私は見ているからだ。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。