笑いのカイブツ

ストロベリー、ピンク、ロシアンルーレット

ホストクラブでバイトを繰り返し体験入店しながら、ツチヤタカユキさんはなんとか日銭を稼ぎます。しかし、ホストはロシアンルーレットのようにアタリハズレの大きいと気づき、とある寂れたバーで働くようになります。
他を圧倒する量と質、そして「人間関係不得意」で知られる伝説のハガキ職人・ツチヤタカユキさん。その孤独にして熱狂的な笑いへの道ゆきが、いま紐解かれます。

はじめてのホストクラブを追い出されてから2週間後、僕はまた別のホストクラブに入った。

ヘルプとして席に着く。何もしゃべれない。たまにふられる話題に、なんとか普通に答える。
その話の流れで、僕は22歳で童貞だとバレてしまった。

「22歳で童貞って、お前、ゲイなん?」

ホストはイケメンが多い。ほぼ全員が、10代初めに童貞を捨てている。

「ゲイちゃいますよ」と強く否定した。

しかし、噂はあっという間に広がり、どの席に行ってもいつしか、ゲイだとイジられるようになった。

ある時、面倒くさくなり、ゲイということに乗っかった。すると、その席は大いにウケた。
それ以降、僕はゲイだとイジられるたびに、それに乗っかるようにした。

すると場が白けて終わっていたのが、ウケまくることになった。ゲイいじりに乗っかることが正解のように思えた。

その店には、ストロベリーさんという先輩ホストがいた。ゴリラのようなガタイの、金髪のホストだった。その人はバイセクシャルだった。

ある日、ストロベリーさんが僕の方へ来て、こう耳打ちした。

「お前、ノンケやろ?」

「はい?」

「お前、ノンケやろ? ゲイのフリすんな」

僕はその時初めて、本物の人には、ちゃんと見分けがつくんだなということを知った。

僕は必死で言い訳をした。

「いや、それは、イジられた時に乗っかった方がウケるんで、そっちの方がええかと思いまして、あえて乗っかってるんですよ……」と話している最中にいきなり、腹をぶん殴られた。僕は地べたに崩れ落ちた。

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笑いのカイブツ

ツチヤ タカユキ
文藝春秋
2017-02-16

この連載について

初回を読む
笑いのカイブツ

ツチヤタカユキ

他を圧倒する量と質、そして「人間関係不得意」で知られる伝説のハガキ職人・ツチヤタカユキさん、二七歳、童貞、無職。その孤独にして熱狂的な笑いへの道ゆきが、いま紐解かれます。人間であることをはみ出してしまった「カイブツ」はどこへ行くのでし...もっと読む

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コメント

kielov 「笑いの表現者として、正しいのは絶対にオレだ」 良い言葉だ。 4年以上前 replyretweetfavorite

haruukonjk お笑いということをストイックに考えたらこんな感じになるんだろうね。極端すぎてそれが魅力なんでしょうね。面白い書籍化したらうれし。 4年以上前 replyretweetfavorite

yojik_ 「食は、経済的な需要供給の産物である。したがって、供給される品が新しく、供給者が創造的で、需要者に知識があるところを見つけるべし」 4年以上前 replyretweetfavorite

hidetomitanaka イベントの下準備で配信に気が付かずに、山形さんには失礼しました。知人に指摘されて書評を拝読しました。コーエンの本の要所を丁寧に解説していただき感謝です! 「新・山形月報!」https://t.co/0VhVLsQhKg @hamanoshiho @sakuhinsha 4年以上前 replyretweetfavorite