はじめてのホストクラブを追い出されてから2週間後、僕はまた別のホストクラブに入った。
ヘルプとして席に着く。何もしゃべれない。たまにふられる話題に、なんとか普通に答える。
その話の流れで、僕は22歳で童貞だとバレてしまった。
「22歳で童貞って、お前、ゲイなん?」
ホストはイケメンが多い。ほぼ全員が、10代初めに童貞を捨てている。
「ゲイちゃいますよ」と強く否定した。
しかし、噂はあっという間に広がり、どの席に行ってもいつしか、ゲイだとイジられるようになった。
ある時、面倒くさくなり、ゲイということに乗っかった。すると、その席は大いにウケた。
それ以降、僕はゲイだとイジられるたびに、それに乗っかるようにした。
すると場が白けて終わっていたのが、ウケまくることになった。ゲイいじりに乗っかることが正解のように思えた。
その店には、ストロベリーさんという先輩ホストがいた。ゴリラのようなガタイの、金髪のホストだった。その人はバイセクシャルだった。
ある日、ストロベリーさんが僕の方へ来て、こう耳打ちした。
「お前、ノンケやろ?」
「はい?」
「お前、ノンケやろ? ゲイのフリすんな」
僕はその時初めて、本物の人には、ちゃんと見分けがつくんだなということを知った。
僕は必死で言い訳をした。
「いや、それは、イジられた時に乗っかった方がウケるんで、そっちの方がええかと思いまして、あえて乗っかってるんですよ……」と話している最中にいきなり、腹をぶん殴られた。僕は地べたに崩れ落ちた。
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