元野球選手の清原氏が覚醒剤使用のネタのインパクトが強すぎて、小保方告白本ネタなどの記憶がすっかりぶち飛んだ感がありますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?
さて清原氏の報道に関して気になっていることがあります。それは日本のメディアでは依存症を「ビョーキ」だとは捉えていないことです。
悪いのは依存する人間。依存する人間の心が弱いのが悪い。支えない家族が悪い。悪いんだから自分で直せ。依存するのは犯罪。
報道からはそんなメッセージが伝わってきませんか。そういう報道を批判する人も、異なる意見を発表する人もいません。
依存した人間を懲罰的に叩き、自己責任という名前で過酷な状況であっても助けない。この傾向は、生活保護叩きに似ています。貧困に陥るのは自分が悪い。自分が悪いのだから助ける必要などない、という。
こういう過酷な自己責任の押し付けは、奨学金の返済に苦しむ若い人、ブラック企業に就職した人を助けないこと、失業した人を助けないこと、非正規雇用の人をゴミのように扱うこと、ベビーカーを押す母親を叩くこととも似ています。自分が就職したのが悪い、自分が借りたのが悪い、自分が混んでいる電車の中で移動するのが悪い。
就職せざる得なかった人、会社を訴える術を知らない人、家庭の事情で借りざる得なかった人、仕方なく非正規雇用になった人らの置かれた立場、社会の変化、そういう人達に危害を加える人達、守る仕組みの不備に関しては議論しようとする人は多くはありません。
議論の多くは「非正規雇用が多くて悲惨だ」「ブラック企業に就職する学生はバカだ」と現状の嘆きや追認で終わってしまいます。改善策やどうしたら助けられるか、という前向きな提言は多くはありません。ネットの論壇も、現状を嘆くことばかりでどうするべきかには触れません。しかし残念ながらそういう記事が人気を集めます。まるで誰も解決なんかしたくないように。
優しい人が多いと「言われている」日本では、なぜこんなに過酷な自己責任追求論がまかり通るのでしょうか? それは日本人が、自分の所属する村の外の人間は、自分の敵としてみなすからです。
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