雪を丸めたりかためたりして形をつくる遊びは、昔から行われていました。小さな雪玉を作って転がし、丸く大きくして遊ぶことを「雪まろげ」と呼び、大人も子どもも楽しんだようです。例えば江戸時代前期の『源氏物語団扇画帖・朝顔巻』には、雪の降り積もる二条院で、光源氏と紫の上が、庭で遊ぶ女の子たちを見ながら話しているシーンが描かれています。着物の裾をひきずりながら、大きな丸い雪玉を作る少女たち。空にはまん丸の満月。月明かりのもとで雪遊びをするなんて、風流ですね。
こうして丸めた雪玉を二つ重ねて、現代のような雪だるまができたのかと調べても、そのような雪だるまは、昔の絵には見つかりません。代わりに、江戸時代の浮世絵には、驚くべき雪だるまが登場します。縁起物で知られる、だるまの形をしているのです。「雪だるま」という不思議な名は、ここから来ているのです。
「江戸名所道戯尽えどめいしょどうけづくし御蔵前の雪」には、大人の背丈より大きい雪のだるまが、雪の町に、圧倒的な存在感で立っています。目鼻と口は、炭で描いたのでしょうか。お腹のあたりが出っぱっているようで、男がひとり、その腹に魚とネギを置き、切れた下駄の鼻緒を直しています。
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