世界の壁は高くない——海外で成功するための教科書(廣済堂出版)
〈国際競争力の壁〉
日本より圧倒的に競争意識が高い海外
世界を席巻しているグローバル企業と日本企業とでは、〝国際競争力〟に壁がある、とはよくいわれることです。
これは実際にあると私も感じています。
その最大の理由は、周囲の環境が極めてコンペティティブ(競争的)だということです。
したがって世界に出て行ったら、日本よりも周囲ははるかに競争意識が強いと感じています。それを端的に象徴しているのが、上場企業のCEO(最高経営責任者)だと思っています。
米国の取締役会でCEOが置かれる立場というのは、とても厳しいものがあります。創業者であろうと、クビを切られて去ることになるケースも珍しくありません。
日本では、社内でトップになって勝ち残り、さらに社内的な立場を維持する、ということに目が向きがちです。日本企業では、社内政治という難しさがある一方で、株式の持ち合いなども慣例化されていて、株主やマーケットからのプレッシャーは、米国よりはかからないのではないかと思います。
欧米型の上場企業のCEOの立場で、それを継続していくために必要なのは、社内政治ではなく、パフォーマンスを上げることと、厳しい社外取締役や株主の評価に応えられるか、ということにつきます。
いわゆるピアプレッシャー(周囲からの圧力)のあり方が、まったく違うともいえます。
外部の視点、株式マーケットや市場の消費者に近いところ、いってみればマスの発想で会社が運営されていくのです。そして、結果を出せなければ、すぐにクビを切られます。
常に外を見ているのが欧米型企業で、対して、常に内を見ることにも力を入れないといけないのが日本企業ともいえます。
事業そのものや外部環境への変化に集中できない経営構造になっているこの点こそが、日本の競争力を落としている一因といえるかもしれません。
CEOもコンペティティブですが、それを取り巻く社外取締役もコンペティティブだったりします。ハーバード・ビジネススクールでは、社外取締役になるための履歴書の書き方の講座が用意されていました。
自分は社外取締役として、ふさわしい能力をこれだけもっている、ということを、いかに履歴書にうまく書けるか。戦略構築能力や知識、取締役会への貢献、新しいCEO探しへの貢献、リーダーシップや影響力、監査の能力、ネットワークなどなど。なにしろ、社外取締役になるのも競争率が高いのです。
有名だから、とか、過去に実績があるから、というだけでは評価されません。実際、社外取締役の人材プールは、膨大です。日本の社外取締役とどちらが優秀か、などということは一概にはいえませんが、米国でコンペティティブに社外取締役になるためのトレーニングを積んだ人たちとは、かなり差があるのではないかと感じています。
これは役員レベルのみならず、個人のスキルにおいても同じかもしれません。
グローバル企業では、社内でどうやってネットワークを構築し、うまく社内政治するかというような感覚はほとんどないのです。
上長に対する感覚もずいぶん違うと思います。海外企業のほうが、上長の裁量権が大きいなど、どちらかというと日本企業よりも上司の権限は強いと思いますが、部下は「だから上長に媚びよう」ということにはなりません。
常に上長を飛び越えようとしたり、上長が高いパフォーマンスを出していない場合は、自分のほうが上長にふさわしいという主張をして、いつでも取って代わってやる、という意識をもっている社員が少なくないのです。そしてそれを、上長もよくわかっています。
それこそ、上司がパフォーマンスしていないのに、どうして自分がパフォーマンスする義務があるのか、という議論にもなります。
過去の成功体験が、競争力を落とす
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