世界中で試行錯誤を続ける名もなき無数のオタクたちが
ノーベル賞級の発見がを支えている
生物学者への道は、一匹の虫から始まりました
ところで、福岡さんが生物学者を目指したきっかけは? 「それは間違いなく、少年時代に『ルリボシカミキリ』という虫に出会ったからです」 それは「瑠璃」という名前にふさわしく、透き通るような青色を特徴とするカミキリ ムシの一種(写真下)。福岡少年は、息を呑むほど美しい「青」から目が離せなくなりました。
福岡ハカセが感動した「ルリボシカミキリ」。学名は「ロザリア」で、“美しい乙女”の意味があります。 背中の青が特徴的ですが、死ぬと急速に黒ずんでしまう。青は生命の証でもあるんです
「なぜこんなにきれいな青色をしているのか。その理由を知りたくなったんです。だって生存のためなら、こんなに青い必要がない。目立って狙われやすくなるだけですから。ひょっとしたら、人間がきれいだと思っているだけで、何か合理的な理由があるかもしれない。または、虫も青の素晴らしさにプライドを持って いるのかも。次々に疑問が湧いてきて、もっと生き物について知りたくなったんです」
前出のフェルメールが好きになったのも、やはり「青」に感動したから。
「代表作の『真珠の耳飾りの少女』で、少女が巻いているターバンの青は今も色あせていない。それは細かく砕いた『ラピスラズリ』という宝石を絵の具に混ぜてあるからです。フェルメールがそこまで青にこだわった理由はわかりません。でもその色は、ずっと私を魅了し続けています」
どうして福岡さんはそこまで「青」に惹かれるのか?
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。