ここは東京、西新宿。医療器具メーカー「ドブ板メディカル株式会社」では、今日も元気に営業会議が行われていました。
馬路手課長「今後、わが社はグローバル展開に力を入れることになった」
と話すのは、30代で課長になった、マジで仕事ができる馬路手課長(マジデカチョウ)です。
馬路手課長「というわけで、営業は全員、年末までにTOEICを受験し、最低でも800点は取得するように」
陽太「800点んん!?」
そう言って目を飛び出させたのは、三年目営業の出来内陽太(デキナイヨウタ)です。この陽太、ベビーフェイスのかわいこちゃんではありますが、
陽太「800点ってめちゃくちゃ高いじゃないですか! 無理ですよ!!」
馬路手課長「馬鹿野郎!」
陽太「わわわわ! す、すいません~!」
ちょっと気が弱いのが玉に傷です……。
馬路手課長「よし、出来内。じゃあまずはお前が率先してTOEIC試験を受けろ!」
陽太「え、えええ~!? そ、そんな~!!?」
こうして、超久しぶりに陽太は勉強をすることになったのでした……。
陽太「英語の勉強なんて、大学以来全然してないよぉ~」
会議が終わって自分の席に戻った陽太は、がっくりと肩を落としました。
河合さん「英語ですか……」
陽太に声をかけたのは、提携先からの出向者、河合さんです。
河合さんは、小さいころはアメリカに住んでいたそうで……
河合さん「英語って、勉強するものなんですか?」
陽太「ぐう! さすがは高学歴の帰国子女!!」
河合さんのセリフに格差社会を感じ、陽太はデスクを叩きつけました。
陽太「河合さんはTOEICとか受けたことはあるの?」
河合さん「ええ、まあ。今の会社に入ってから受けろと言われたので」
陽太「その時の点数は何点ぐらいだった?」
河合さん「1200点ぐらいですね」
陽太「1200点!!!!!?」
陽太は目玉が飛び出ました。
陽太「1200点って! 確かTOEICの最高点って、999点じゃなかった!?」
河合さん「え? そうでしたか? まあそのようなものです」
陽太「そのようなものって……」
はあっと陽太はため息をつきました。
陽太「いいよなぁ河合さんは……。僕なんて全然、英語できないし……」
河合さん「なら、勉強すればいいじゃないですか」
陽太「そうなんだけど、でも僕、勉強とか嫌いでさ……。受験勉強も超嫌いで、全然しなかったんだよね。出来ればTOEICも勉強したくないなぁ」
陽太の言葉を聞いて、河合さんはふっと鼻で笑いました。
河合さん「出来内さん、英語でそういう人のことを何て言うか知ってますか?」
陽太「え? ううん、知らない」
河合さん「レイジーって言うんですよ」
陽太「れいじー? どういう意味?」
河合さん「『怠け者』って意味です」
陽太「な、怠け者……」
河合さんの冷たい微笑に、陽太の心は奈落の底に突き落とされたのでした。
陽太「うわああああああああ!!!!!! ずんずん先生!!!!」
陽太は泣きながら医務室のドアを叩き開けました。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。