プリティ・ガールズ

深く甘い眠り

ポールは女性の尾行記録が記されたファイルを大量に保管していた。そのことを姉のリディアに打ち明けたクレアはようやく不眠から解放されるけれど……。


プリティ・ガールズ 上(ハーパーBOOKS)

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 クレアは自室の椅子にすわって、姉がポールのファイルを調べるのを眺めていた。リディアはさらにショッキングな事実が出てくるのではないかと意気ごんでいるようだが、クレアは次々と出てくる新たな事実に押しつぶされそうになっていた。

 ほんの二日前、夫の棺が地面に下ろされていくのを見ながら、自分も一緒に埋葬されればいいのにと考えていたはずだったのに。肌が干からびている感じがした。ひどい寒気がし、瞬きをするのもひと苦労だった。そのまま目を閉じていたいという誘惑に抗えそうになかった。

 手のなかのプリペイド携帯を見つめた。午前零時三十一分、アダムはクレアのメールに対し、“オーケー”という短い返信を返してきた。

 なにがオーケーなのかわからなかった。USBメモリがポストで待っている。アダムは中身を見るまで判断を保留しようとしているのだろうか。

 サイドテーブルに電話を置いた。答えの出ない疑問にうんざりし、夫の死を嘆くのではなく、そもそも彼を愛した自分の正気を疑わざるをえなくなって腹立たしかった。

 リディアにはそのような留保はなかった。床にすわってプラスチックの箱を探っている。 子どものころハロウィンの夜にしていたのと同じ顔だ。

 色のついたファイルをアルファベット順に床の上に積み重ねていた。色は年代によって分けられていた。この六年でポールは十八人の女性を尾行させている。

 もっと多いのかもしれない。

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カリン スローター
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2015-12-02

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カリン・スローター

成功した夫と美貌に恵まれ、なに不自由ない生活を送っていたクレア。だが、ある日暴漢に夫を殺されたことから、彼女の人生は暗転する。葬儀中、自宅に強盗に入られたクレアは、刑事に加えFBI捜査官が事情聴取に現れたことを不審に思い、夫のパソコン...もっと読む

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