ゲンロン東浩紀「千円の動画を千人が見ている意味を、真剣に考えたほうがいい」

2010年に会社ゲンロン(当時コンテクスチュアズ)を興し、雑誌の発行やイベント、スクールの運営などを手広く手掛ける哲学者の東浩紀さん。思想家、作家としても活躍する一方で、自ら会社組織を立ち上げたのはどうしてなのでしょうか。
中編では、昨年12月に創刊された批評誌『ゲンロン』のビジネスについて伺っていきます。雑誌不況の時代に、東さんはどのような構想を立てているのでしょうか?

3000部売れればいい設計にしてある

加藤 前回のお話で、なぜ哲学者で作家の東さんが、専業作家や大学教授に安住せず、「ゲンロン」という会社を立ち上げたのかを伺いました。熱い思いやネットの仕組みだけでは、5年、10年という単位では続かない。きちんと「続ける」ために会社組織があるというお話でした。

 はい。ちょうど5年たったところです。

加藤 今回は「ゲンロン」のビジネスについてお伺いしたいと思います。
 昨年12月に新たに批評誌『ゲンロン』を創刊されましたよね。この雑誌を「最低3年続ける」と創刊の辞にありました。

ゲンロン1 現代日本の批評
ゲンロン1 現代日本の批評

 はい、3年はやるつもりです。4カ月に1回、合計9冊出し続ける予定です。

加藤 この雑誌不況の時代に、3年も続くことを約束できるのはすごいことです。

 ゲンロンができて5年。やっとそういうことを約束できるような会社になったということですね。

加藤 中身を拝見すると、特集として「現代日本の批評」。その他も読み応えがありそうな企画がつまっているようです。今、このような直球の批評誌を出したのは、なぜなんでしょう?

 ぼくはこういう雑誌を読みたい。だけど、ほかに誰もつくらないからです。たとえば、この創刊号では「テロの時代の芸術」という特集の中で『カラマーゾフの兄弟』を読むという鼎談をやっています。なぜかといえば、実はドストエフスキーはもともとテロリズムをテーマにしている作家なんです。そういう観点で見れば、現代に通じる話です。
 ぼくはそういう「現実からちょっと離れた視点で現実を見る」ことこそが批評の核だと思うんだけど、いまはそういうことを企画する編集者もいないし、そういう雑誌もありません。

加藤 出版社がやらないのは、たぶん、そういう雑誌が売れないからという側面も大きいですよね。

 そこはいくらでも工夫できます。そもそも大手出版社と取次による一般的な出版スキームは、たくさん売ることを前提にしています。
 他方で、『ゲンロン』は3000部売れれば採算が取れるように設計してあります。1万部刷っていますが、1800人近くいる「ゲンロン友の会」の会員に配り、ほか献本などを考えると実質8000部です。そのうち3000部売れれば、もう大丈夫。そしてうちの場合、3000部はまず確実に売れます。
 こういう低い目標を設定できたのは、この3年で、カフェやスクールなど付帯事業を強化してきたから。だから「3年で9冊出す」と自信を持って言うことができるんです。それに、それでも5000人近くが読んでいることになるので、この手の雑誌としては影響力があるはずです。

加藤 なるほど、ちゃんと持続可能なビジネスとして設計してあるわけですね。

 ガチの批評誌だって、採算ラインと売り方をちゃんと考えれば成立します。日本のものづくり全般がそうなのかもしれないけど、「俺たちはこれをつくりたいんだ!」という気持ちだけで商品をつくっても難しいですよ。供給サイドの論理だけでつくるのは、サスティナブルじゃないんです。

加藤 前回もお話されてましたが、東さんの今のキーワードは「サスティナブル」なんですね。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
メディアビジネスの未来

cakes編集部

インターネットによって、さまざまな業態が変化する2015年のいま。メディアの形とビジネスの仕組みは、どのように変わるのか。cakesの3周年企画として、未来のメディアビジネスの形をつくろうとしているみなさんにお話を伺いました。シリーズ...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

magnettyy Fabっぽい話 3年以上前 replyretweetfavorite

oyamakumao @murmur_mag お忙しいと思うので、前みたいに事務所で雑談はできないかと思いますが笑 またいつかこんなお話しましょう笑。最近はこんな記事がおもしろかったです。→ https://t.co/TmBMUEyUTn https://t.co/iHzSZy4ysz 有料ですが! 3年以上前 replyretweetfavorite

lion_vox 既存メディアが、かつてない疾さで変化や転換の方法を要求され、かつ、対応できなかった場合は突然死のように消える事を余儀なくされている時代… 【 4年弱前 replyretweetfavorite

kikan__gentei イベント。イベントの放送見放題で月額10080円 4年弱前 replyretweetfavorite