A.あり。「すべての恋はすばらしい!!」というクッキングパパの世界がゆえのオリジナルルール。ただし、既婚者とのデートはあくまでも "スマート&カジュアル" で!!
ハートフルな家族の絆が描かれる「クッキンングパパ」だけれども、意外なことに、既婚者が堂々と配偶者以外とデートを楽しむシーンが何回も出てくる。彼らの「自分(や相手)の配偶者を裏切らずに、憧れの異性とのデートを楽しむ」独特の方法をご紹介したい。
事前の根回しはマスト!
クッキングパパ・荒岩の周りでは、荒岩の知り合いや取引先である年配男性が荒岩の勤める金丸産業の女性社員に憧れてしまうということが起こりがちだ。
荒岩の知り合いの農家のおじいさん、政さん(推定60代後半)は、金丸産業をたびたび訪れて荒岩に野菜を届けているうちに、金丸産業の受付嬢に恋をしてしまう。(なんで会社にまで押しかけて野菜を……? と思うが、クッキングパパに出てくる老人たちは総じて行動力がやや過多気味なのだ)。 その思いのあまり、政さんは荒岩に「(受付嬢に)この思いを伝えてくんろ このとおりじゃ」と土下座せんばかりの勢いでデートの仲介を依頼する。自分は妻子もある身だが「いっぺんだけデートがしてえ」となりふりかまわず土下座せんばかりの勢い。言い方は悪いが冥土の土産というやつだろうか……。
○13巻 cook.129 P153 知り合いの農家のおじいさんにデートの仲介を頼まれる荒岩、お疲れさま……©うえやまとち/講談社
もうひとり、荒岩の昔からの取引先担当者である「三星産業」の竹田氏という人がいる。横浜に妻子を残し、長年博多へ単身赴任していた。そのときから、荒岩宅に招かれて食事をしたり、荒岩から料理を習ったりして親しい仲だった。 そんな竹田氏も数年前に横浜へ戻り、いよいよ定年退職を迎えることになった。最後の博多出張に来た竹田氏は荒岩に「実は博多にいる間ずっとステキだなーっと思っていた女性がいるんだ」と告白する。それは荒岩の部下のけいこ主任。けいこも夫と子がいるが、竹田氏は「わびしい単身赴任中生活のなかで、けいこのはつらつとした姿を見て元気が出た」と告白している。
○84巻 cook.814 P114 竹田氏、あなたもですか©うえやまとち/講談社
そして竹田氏も「一度だけでいい けいこさんとゆっくり食事でもできたら……」というのだ。
営業補佐のけいこと取引先の竹田氏は、仕事上でガッツリと絡んだわけではなく、きっと荒岩を訪ねてきた竹田氏にけいこが茶を出したり、そのときにちょっとした会話をしただけ。政さんとて受付嬢とは挨拶をしたり、荒岩に取り次いでもらうための会話をしただけ。そろいもそろって、こんな恋というには淡すぎる思いをデートという形にしようと思うのだろう。
定年退職間近と言うことは、竹田氏も65歳くらいだろうか。クッキングパパの世界では冥土の土産は憧れの女性とのデートと相場が決まっているのかもしれない。 こんな淡すぎる恋だからこそ、いきなり直接デートに誘ったら警戒されるに決まっている。だからこそ、信頼できる荒岩による根回しが必要なのだ。
デートの誘いはみんなの前で堂々と!
そして荒岩の根回しによって、政さんと竹田氏は人は無事思い出作りのデートの約束を取りつける。そうとなればふたりとも、みんなの前で堂々と女性を迎えにいくのである。 受付嬢に恋をした政さんの場合「ふたりいる受付嬢のうち政さんが思いを寄せている女性を荒岩たちがが勘違いして根回ししていた」などのアクシデントがあったが、受付嬢初子さんは政さんの一世一代のデートの誘いを快く引き受けている。
○13巻 cook.129 P156 この勢いで言われたらねえ…©うえやまとち/講談社
竹田氏の場合は、もっとスマート。けいこの仕事場まで出向いて、みんなの前でジェントルにエスコートし、ディナーに出かけている。
○84巻 cook.814 P116 これからデート©うえやまとち/講談社
せっかくのデートなのに、なぜふたりともみんなの前で「これからデートをします!」と宣言するようなことをするのだろう……と思ったけれど、こうして会社内で宣言することで、「これはやましいことではないですよ!」とアピールし、堂々と思い出作りができるという、ある意味スマートすぎるやり口はお見事。
いやしかし、男性のほうはいいだろうけど、ただの思い出作りのためにつきあわされる女性としてはどうなのよ……と思いきや、初子さんもけいこも既婚男性の一世一代の心意気を感じたのか、快くOKしている。「妻子ある男性と食事なんて浮気じゃないですかー」とさえずる後輩たちに、けいこは「愛とか恋とかフリンとかウワキとは違うものもあるのよ人生は」と、なんとも大人なひと言だ。
博多の女性はみんなこんなに心意気がいいのか。
◯84巻cook.814 P115 けいこの大人のひと言
別れはさっぱり、あっさりと
こうやって必死で既婚者デートにこぎつけた政さんと竹田氏だけれど、ふたりとも素敵なレストランにエスコートして、紳士的に食事をするだけ。最後にはお互い感謝の意を述べて、連絡先も訊かないでさっぱりとお別れ。本当に一度だけの思い出として、家族のもとへ帰っていく。
○13巻 cook.129 P161 政さん、初子さん、さっぱりと別れる©うえやまとち/講談社
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