音花ゆりは「悪い男」をどこまで許せるか?

「プリティ・ガールズ」特別編、元宝塚・音花ゆりさんインタビューは最終回。徐々に明るみになる主人公・クレアの夫ポールの実情。そんなポールの素顔を音花さんはどう読んだのでしょうか? そして今回、初めてスリラー小説を読んだ音花さんが、おすすめの作品を紹介してくれました。(構成:青柳美帆子 写真:葛西遼)

『プリティ・ガールズ』本編はこちらから

音花ゆりはポールを愛せるか?

— 『プリティ・ガールズ』は、姉妹愛や家族愛、そして夫婦愛も描かれています。宝塚という場で長らく愛の物語を伝えてきた音花さんの目には、ポールとクレアの愛はどううつりましたか?

音花ゆり(以下、音花) ポールは、物語が進むにつれてどんどん恐ろしい面が明らかになっていくキャラクター。でもポールがクレアを本当に愛していたというのもわかる。悪ではあるけれど、その中でも人としての心を持っていたんだなと。

— ポールにとっての唯一の良心が、クレアなんですよね。

音花 きっとポールは、クレアがここまで強くなると思わなかったでしょうね。それは愛するがゆえの盲目ですし、そのうえで許せないほどの憎しみを持たれると思わなかったのは彼の唯一のミス。そういうところも、ある意味人間的ですよね。ポールのそういう部分がなかったら、救いがなかったと思います。

— ポールは歪んだキャラクターですが、もし音花さんがクレアだったら、ポールを愛せますか?

音花 ポールはちょっと……(笑)。でもね、クレアにとってのポールは、全てを任せられるくらい信頼できて、自分を愛してくれる人だったんですよね。それって、女性が憧れるとするような男の人の理想形だと思います。ただクレアにとってはそう見えていたけれど、家族からは最初から不信感を持たれていて、そこも不思議なところですよね。

— 宝塚の作品に出てくるのは正統派なヒーローが多いと思うのですが、ポールのような「ヘンタイ」というか、ちょっと難点のある人もいるんでしょうか?

音花 うう~ん、ちょっとツッコミどころがあって親しみがある人はいますが、ヘンタイは……(笑)。あっ、でも二番手の男役さんがすごくおいしく演じられるパターンはありますね。柚希礼音さんが演じていた『スカーレット・ピンパーネル』のショーヴランなんかは、そんなにかってくらいヒロインに執着するんですよね。柚希さんというスターがするからステキだけど、ふつうに考えると執着ありすぎですよ! そういったキャラはいろんな作品に出てきて、面白さの要素になっていますが、主演ではあまりいないですね。

— 三角関係の片割れなどによく出てくる。

音花 『オーシャンズ11』でヒロインが結婚しそうになるベネディクトも、しいて言えばポールと似ているところもあるかもしれない。ホテル王ですべてを兼ね備えた人だけど、裏であくどいことをやっている。そもそも『オーシャンズ11』は主演のダニー・オーシャンも詐欺で捕まって刑務所帰り。ヒロインはどちらの裏の顔も見抜けていなくて……(笑)。

— そういった「悪い男」は、どれくらいまで許せますか?

音花 う~ん、ポールは許せないです! 犯罪はしないでほしい。でも、ドラマ「ホワイトカラー」に出てくる天才詐欺師ニールは、かっこいいんですよね……あんなだったら許しちゃうかも。うそうそ、わからないです(笑)。起きてみないとわからないです。クレアとポールはそれでうまくいってましたから、相性次第なのかもしれない。宝塚を見ていても、いろいろな愛の形があるなと思います。

— ちなみに、音花さんは宝塚の主演のような男性と、二番手の一風変わった男性、どちらが好きですか? たとえば『ベルサイユのばら』だと……。

音花 私はアンドレが好きです~! 組の中でも、「アンドレ派」と「フェルゼン派」に分かれてたりしていました、そういえば(笑)。

読書人に勧める宝塚作品はコレだ!

— 宝塚ファンの方に、本書はオススメですか?

音花 宝塚の作品は男女の愛がベースになっているので、そういう意味では『プリティ・ガールズ』はちょっとパンチがありすぎるかもしれない。でも作者の方のメッセージを見ると、「若くて可愛い女の子が晒されている危険」や「普段の生活の中にひそむ危機」への警鐘を鳴らす意味でこの作品を書いているそうなんです。そういったメッセージを織り込んだうえで、すごく後味がすっきりしている。なので、興味を持ったら、毒を食らわば皿まで! という感じで読んでみてほしいです。

— 「親しくしている人の違う一面を見てしまう」というシチュエーションは、宝塚の作品でもありますか?

音花 別の面を見てしまう、という設定は、宝塚の中でもいろんな描かれ方をしていますね。「本当のことを見つめる目を持っているか?」を問われる作品が多い。自分の愛する人が、怪盗だったり、ヒーローだったり……『スカーレット・ピンパーネル』もいい例だと思います。結婚初夜に妻のことを信じられなくなった夫、夫婦のせめぎあい、三角関係。最終的にはカップルのハッピーエンドなので、『プリティ・ガールズ』とはちょっと違いますけれど。

— 逆に、本書のような小説を好きな方に宝塚の作品を勧めるとしたら、オススメはなんですか?

音花 『スカーレット・ピンパーネル』をオススメしたい気持ちもありますが、ちょっと明るすぎるかな? 難しいですが、スリラー小説だけに限らず「本好き」の方には、原作本が有名な作品から入っていただくのもいいかもしれません。『ベルサイユのばら』や『スカーレット・ピンパーネル(「紅はこべ」)』、『うたかたの恋』や『ロミオとジュリエット』、『アンナ・カレーニナ』とか。昔から読まれている本がいろんな作品の原作になっているので、そこから入っていただくと、見え方が違っておもしろいかもしれないですね。先ほどお話した『オーシャンズ11』は映画版が有名ですが、宝塚版は映画版よりもコメディタッチが強く、愛にフォーカスした物語になっています。

— 宝塚は、意外な原作を演じてくれることも多いですからね。過去は『逆転裁判』もありましたし、今度は『るろうに剣心』も!

音花 そうなんですよ。『るろうに剣心』は小池修一郎先生とのタッグですし、トップが同期なのですごくうれしいです!

— オススメ、ありがとうございました。それでは最後に、音花さんの今後の活動について教えてください!

音花 1月にカメリアホールで4人芝居のリーディングドラマ「わが愛の譜~滝廉太郎物語」、3~4月には柚希礼音さんのREON JACKに出演します。宝塚にいたときに、歌を認めていただけたのもあって、歌を中心に続けていけたらいいなと思っています。でも制限をつけずに活動していけたらいいなと。

— いつか、妹の相武紗季さんとの共演も……?

音花 そうですね。これまではお互い「ちょっと早いよね」と言って共演することがなかったんです。彼女は私が大好きな女優でもありますし、尊敬する女優でもあるので、いつかご一緒させていただきたいですね!

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2015-12-02

この連載について

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プリティ・ガールズ』特別企画 音花ゆりインタビュー

音花ゆり

元宝塚の娘役として人気を博した音花ゆりさん。彼女が初めて読んだスリラー小説が、cakesでも連載している話題作『プリティ・ガールズ』です。今回は特別企画として、音花さんに『プリティ・ガールズ』の魅力についてお話をうかがいました。衝撃的...もっと読む

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