プリティ・ガールズ』から見る家族の絆と宝塚

元宝塚・音花ゆりさんインタビューは中編です。妹が女優の相武紗季さんであることは知られていますが、実はお母様も元宝塚だったという音花さん。『プリティ・ガールズ』に描かれた家族の絆に感じた共通点とは? また、宝塚にいた音花さんだから知っている秘密のエピソードも満載です。cakes掲載中の『プリティ・ガールズ』本編と合わせてお楽しみください。(構成:青柳美帆子 写真:葛西遼)

家族の絆と姉妹愛

— 『プリティ・ガールズ』は、姉妹の物語であると同時に、家族の絆も描かれている作品です。音花さんのお母さまも宝塚に入団していますが、お母さまを含めた家族の関係はどのようなものなのでしょうか。

音花ゆり(以下、音花) 『プリティ・ガールズ』に登場するお母さんのヘレンは、真面目というか、一直線に自分の考え方をしっかり持っている女性ですが、私の母もそういうところがある人ですね。そんな母に対する信頼はすごくあって、母と私たちにも強い絆があります。
 妹はたぶん母をいちばん信頼していて、なにかあったときにはまず母に相談していますね。ある意味友達のように、なんでも話せる間柄です。ただ、クレアとリディアの一家に起こったようなことが私たちの身に起きたら、どうなってしまうんだろう……。

— 怖い想像です。本書の登場人物だとしたら、どのような行動をとっていたと思いますか?

音花 いちばん上の姉のジュリアの失踪のあと、家族はみんな違った行動をとるんですよね。真ん中のリディアは派手に荒れるし、末っ子のクレアは優等生的に振る舞う。クレアは末っ子として、本当に孤独だったろうなと感じます。ジュリアのことが「触れてはいけない話題」になって、家族がどんどんバラバラになって、残されていく……。私だったら、どうなんでしょうね。漠然と考えてみると、父のサムのように「自分で真実をつかみ取りたい!」という思いが強くなるような気がします。でも、母のヘレンの「前に進まなければいけない」という気持ちもすごくわかる……。結論は出ないですね。

— 家族を突然失ったときの複雑すぎる気持ちが、各キャラクターに振り分けられてるような印象がありました。

音花 その感じが、すごくアメリカっぽいなと思ったんですよね。リディアの荒れ方はまさに……という感じですし、サムの行動は、アメリカドラマでもよく見る「アメリカの戦い方」。逆にクレアは「耐える精神」を感じるので、わりと日本人寄りかもしれません。

宝塚は「家族」

— 音花さんが中学を卒業してからずっと所属していた宝塚の人々も、ある意味家族のようですよね。

音花 家族でした。現役のころからのお付き合いは今でも続いていますし、OGになってからでもどんどんつながりが増えています。「ファミリーなんだな」と、辞めてから強く感じるようになりました。

— 現役のころは当たり前だった関係が、退団されてわかるようになったということでしょうか。

音花 そうなんです。寝る時間以外はほとんどずっと一緒にいる人たちだったので、その環境の良さを今になって感じて。自分の良いところも悪いところもひっくるめてわかってくれていて、ひとつの目標に向かってみんなで妥協せず進んでいる。すごく体育会系ノリなんですけど、ずっと青春が続いている……良いところにいたなと本当に思います。

— 宝塚のファンに聞くと、宝塚の舞台上では日によって違う阿吽の呼吸を感じることがあると。そういうことができるのは、「家族」だからですか?

音花 そうですね。やっぱり一緒にいるので、お芝居が「読める」んです。役作りのために事前に資料を読み込んだり、ときには年表まで作ったりして勉強するんですが、公演期間が始まってからも役への理解が向上することがあって。前日になかった知識が入ってきたことによって、セリフの言い回しや意味が「こうだったんだ!」とひらめくこともよくあるんです。それをお互いに意識し合っているから、変化に気づかない日はないくらい。みんながお芝居に対して敏感に向きあえる場所でした。

— お互いに家族のように理解しているから、あんな素晴らしい舞台が出来上がっていくんですね……。音花さんから見た宝塚について、もっと教えていただけるでしょうか。

音花 上下関係があるのが素晴らしいと思います。集団生活の中で、下級生が何事も先回りをして、上級生を立てることが伝えられている。それが人との関わり合いや、舞台上での安全につながること多いんです。

— たとえば、どういうことでしょう?

音花 簡単なことで言うと、タクシーを止めるとか、エレベーターで先に乗り込んで階数ボタンを押すだとか。そういう小さなことから始まり、「上級生を煩わせない」という前提をみんなが共有しています。そうすると、舞台が真っ暗になって「さあハケます!」というときにも、「上級生が動くときは下級生がよける」というのが身に染みているので、正面にぶつかるような事故がまず起きません。なにか混乱が起きたとしても、脳裏にみんながそれを思い浮かべるから、大きなトラブルにならないんです。

— なるほど。宝塚名物の早変わりも、そういう普段からの積み重ねがあるから可能なんですね……!

音花 ほかにも、上級生が「聞いてください!」と言えばシーン! ってなるし、海外公演で移動するときも最下級生が上級生をしっかり誘導する決まりが徹底されています。宝塚の上下関係というのは、すごく良いなと思いますね。

タカラジェンヌとユッケの秘密
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この連載について

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プリティ・ガールズ』特別企画 音花ゆりインタビュー

音花ゆり

元宝塚の娘役として人気を博した音花ゆりさん。彼女が初めて読んだスリラー小説が、cakesでも連載している話題作『プリティ・ガールズ』です。今回は特別企画として、音花さんに『プリティ・ガールズ』の魅力についてお話をうかがいました。衝撃的...もっと読む

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Harperbooksjp 元宝塚スターが読み解く話題の海外ミステリー 3年弱前 replyretweetfavorite

hirarisa_F この取材をしてからユッケを頼むときは複数皿頼むようにしている 3年弱前 replyretweetfavorite