2015年2月のある日、僕は動けなくなってしまった。
体内にある、絶望と憎悪と虚脱感を、混ぜ合わせて作られた、巨大な沼。自分の体内にあるすべての領域が、その沼になっていることに気付いた。もうその沼以外、何も残っていなかった。
僕はそのまま、自分の中に出来た、その巨大な沼の中に、引きずりこまれて行き、それからは死体のように、布団の上から、動けなくなってしまった。 布団から見える世界だけが、僕のすべてになった。
次第に、自分が生きていると、思えなくなっていった。
僕はもう死んでいて、肉体だけが、抜け殻のように、この世にあるだけだった。
布団から天井を見上げながら、自分が死ぬのを、ただ僕は待っていた。
なのに僕は、いつまでも死なないまま、そのままの状態で、毎日は過ぎ、日付は自動的に更新されて行き、ただそこにぶっ倒れた状態で、二週間が経った。
ほとんど何も飲まない。ほとんど何も食わない。トイレに行く回数も恐ろしく少ない。
もう死んでいるのと同じなのに、もう生きていたくないと、全身で意思表示しているのにも関わらず、また今日は始まり、そして終わる。
それは、僕の意思に関係なく、どこまでも続いていく。
もうここで終わらせてくれ。
目を閉じる。
静寂。
しばらくそうしているが、何も終わらない。
終わってくれ。
終わらせてくれ。
頼む。
それなのにも関わらず、何も変わらず、ただただ静寂。
僕はもう、自分で自分を殺すことでしか、僕が救われる方法はないんだと思った。
僕は、遺書を書こうと思い至った。
紙とペンを取り出して、もう全部がどうでもいいと、そこに書いた。何もかも全部が、クソみたいだったと書いた。だから、こんな世界から消えれることは、何より幸せなことだと書いた。
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