親の死に目には会えなくてもいい

本書執筆のために行ったアンケート調査では、「親の死に目に会いたい」と回答した人が66%でした。親を疎ましいと思う反面、長生きはしてほしい、という愛憎入り混じる矛盾した感情が、「親に疲れた症候群」をもたらす最大要因と言えそうです。そこで今回は、親の死に目に関連して、親の延命措置はするべきなのか、相続の際に何を気をつけるべきか、親は何歳まで生きるのが理想なのか、についてご紹介していきます。

親の死に目には会えなくてもいい

 この本を手にする読者は、親に恨みを持つ人が大半だと思う。しかし、第1章で紹介したとおり、本書の執筆のために実施したアンケート結果からは、「親には長生きしてほしい」という矛盾した感情を抱える人も多い。

 そのため、離れて暮らす親が高齢になるにつれ、「親の身になにか起こったらどうしよう」と心配する人もいるだろう。親が独りで暮らしている場合は、なおのことだ。安否確認のために毎日欠かさず、決まった時間に電話をかけている人も少なくないだろう。

 だが、私は、別居する独り暮らしの親への連絡は、3日おきくらいのペースがちょうどいいと考えている。

 延命治療が発達した現代の医療環境では、患者さんが倒れてすぐに病院に運び込まれると、死が避けられない状態であっても、人工呼吸器や人工心肺装置などの生命維持装置をつけて、命だけは生き永らえさせる措置を取ることになる。

 意識のない植物状態や脳死状態であっても、身内の人たちが病院に駆けつけて死に目に会うことができるまで、強制的に生かすのだ。親自身が平穏な死を望んでいた場合、果たしてそれは親にとって好ましいことだろうか。

 3日おき、週に2回くらいの間隔で親と連絡を取っていれば、もしその間に親が倒れていたとしても、余計な延命措置を受けることなく、自然に死を迎えた後で発見される可能性が高くなる。

 こうした私の考え方に対して、「親を孤独死させるのか!」といった反発する読者もいるだろう。死に対する考え方は人それぞれである。いずれにせよ、いつか必ず訪れる親の死について、覚悟を決めておくことが重要だ。

 私の患者さんで、70代後半でまだお元気なのに、旅行、特に海外旅行に行きたがらない人がいる。その理由は、「旅行先でなにかあったら大変」というものだ。

 70代後半で「なにかがある」というのは、命にかかわることだろう。海外に限らず、たとえ自宅にいても、重病の場合は助からない可能性もある。薄情かもしれないが、おそらくそれが寿命というものだ。

「海外で亡くなっても遺体を輸送するサービスがあるし、下手に医者にかからないほうが苦痛は少ない場合も多いので、足腰が丈夫なうちに好きなことをしてください」と、私はアドバイスしている。平均寿命に近くなれば、「なにかあったとき=寿命」と考えて、むしろ医療から遠ざかるほうが平穏な最期を迎えられる気がする。

 私の母は現在90歳で、自宅近くの介護施設で暮らしている。母親と電話で話すときや面会に訪れるときは毎回、心のどこかで「これが最後かもしれないな」と思いながら接している。そんな心構えでいれば、たとえ親の死に目に会えなくても、後悔は少ないだろう。

 前述のアンケート調査では、「親の死に目に会いたい(会いたかった)」と回答した人が66%にのぼり、親の死に目に会うことにこだわる人が非常に多かった。

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親を殺したくなったら読む本

石蔵文信

父や母に「もう死んでしまえ!」と思ったことのあるすべての人へ――。 「親の存在がストレス」→70%! 「親を殺したくなる」→45%! 777人への意識調査でわかった、30~60代男女を襲う現代病、"親に疲れた症候群”の真実。 毒母の呪...もっと読む

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fujikokoni コロリと死ぬことができる病気の代表例は、血管が詰まったり切れたりする心筋梗塞、動脈瘤破裂、脳卒中などだ。(中略)つまり、ピンピンコロリを願うなら、暴飲暴食や喫煙、運動不足など、不健康な生活を送ったほうがいいのだ。 https://t.co/bTs406xBBc 約4年前 replyretweetfavorite

sizukanarudon 【親を殺したくなったら読む本】 石蔵文信 https://t.co/T5UOE8FcEA ピンピン生きてコロリと死ぬと願う人ほど健康に気を遣い、生活習慣病の予防に熱心。 日本人の 平均寿命 男性80歳、女性86歳 健康寿命 男性71歳、女性75歳 約4年前 replyretweetfavorite

chihare 池波正太郎の母親は、ぽっくり逝きたいから心臓に負担をかけるのだ、と言ってお寿司をよく食べたときく。『ショコラ』読んだときも思うけど、「死ぬ」とは何だろうな。 約4年前 replyretweetfavorite

Leventseleve 良い記事。>「1人で死んでゆくことは、不幸なことでもさびしいことでもない。孤独死がかわいそうだというのは、生きている者の側からの勝手なイメージだ。」 約4年前 replyretweetfavorite