​『イット・フォローズ』 思春期の憂鬱は追ってくる

デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督のホラー映画『イット・フォローズ』は、その作り込まれたシナリオと映像から、アメリカで大変な話題を呼んでいます。この話題作の核心がどこにあるのか、ブロガーの伊藤聡さんが読み解きます。

2015年、低予算の作品ながら、クエンティン・タランティーノやエドガー・ライトら有名映画監督の賞賛をうけ、ヒット作となったアメリカのホラー映画が『イット・フォローズ』である。正体不明の「それ(It)」がひたすら主人公を追いかけてくる、というシンプルなあらすじや、非常に美しく構成された映像などが注目された作品だ。

物語の舞台はデトロイト。19歳の少女ジェイは意中の男性と性行為に及ぶが、その後くだんの男性から、性交によって彼女は感染し、「それ(It)」の標的になったと告げられる。「それ(It)」は、さまざまな人間の姿に変身しながら主人公を追う謎の存在だ。走ることができず、動きは遅いが、どこまでも彼女を追いつづけ、「それ(It)」に捕まれば死んでしまう。死を避けるには他の誰かと性交し、その相手にバトンをうつすほかない。少女をあらたな標的と定めた「それ(It)」は、少女の自宅、通っている大学などあらゆる場所へ現れ、ゆっくりと近づいてくるのだった。

単にホラー映画と呼ぶだけではとらえきれない、豊かな奥行きを持った作品である。アメリカの郊外住宅地(サバービア)を舞台にした10代男女の物語は、青春映画の輝きを備えており、撮影の美しさもあいまって新鮮な印象を与える。観客が、みずからの思春期を重ね合わせながらストーリーの展開を見守りたくなるような繊細さがあるのだ。とはいえ、いつ「それ(It)」があらわれるのだろうというホラー映画ならではの恐怖やスリルは、全編を通して途切れない。

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およそ120分の祝祭 最新映画レビュー

伊藤聡

誰しもが名前は知っているようなメジャーな映画について、その意外な一面や思わぬ楽しみ方を綴る「およそ120分の祝祭」。ポップコーンへ手をのばしながらスクリーンに目をこらす――そんな幸福な気分で味わってほしい、ブロガーの伊藤聡さんによる連...もっと読む

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コメント

_faruco_ りさちーが見た映画の記事。先週あたり、たまたま目について読んでた。 3年以上前 replyretweetfavorite

tatsuya1965 『イット・フォローズ』(東京シネマテーブル課題映画)思春期の憂鬱は追ってくる|伊藤聡 @campintheair https://t.co/e81piI3gpB 3年以上前 replyretweetfavorite

campintheair 『イット・フォローズ』。郊外映画としての側面が、個人的にはとても大きくて、そこにはアメリカの生活様式や社会のあり方が見えるように感じました。結論としましては、cakesに私が書いた評を読んでみてくださいね、ということです。エヘヘ。 https://t.co/RNTq1ATQbz 3年以上前 replyretweetfavorite

sanchama 『イット・フォローズ』 思春期の憂鬱は追ってくる|伊藤聡 @campintheair https://t.co/lmk7BIrB0z 3年以上前 replyretweetfavorite