初夢で吉凶を占う習慣は、鎌倉時代にはすでにありました。歌人の西行が、こんな歌を残しています。
年くれぬ春は来べしとは思ひ寝にまさしく見えてかなふ初夢
年も暮れ、春はきっと来ると思って寝たら、それが本当に見えて、初夢がかないました。
現代のように科学が発達する前、人々は、夢に見ることは神仏のお告げだと本気で信じていました。法隆寺に夢殿とよばれる建物がありますが、この名も夢と関係があります。この地はかつて聖徳太子の一族が暮らす斑鳩宮で、そこにも同じ名の建物がありました。太子はその中にこもって夢占いをしたと考えられているのです。
戦国武将の北条早雲が見た夢も有名です。一説には初夢ともいわれていますが、1匹のネズミが2本の杉の大木をかじって倒し、トラになったという夢です。ねずみ年だった早雲は大喜び。宿敵だった2つの上杉家を倒せると信じたからです。年の初めに、なんとかして吉夢を見たい! そんな人々のために、江戸時代には「宝船売り」が新年の町を流しました。2日の正午過ぎから夜にかけて見られたというので、江戸の初夢は2日の夜に見るものだったのですね。「お宝~お宝~ えー宝船~」と売っていたのは、宝船やそれに乗る七福神の絵。人々はそれを買い、枕の下に敷いて眠ったのです。
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