僕は 24 歳で、東京に上京することになった。
上京の経緯については、いずれ書くことになるだろう。
その頃の僕は、ファーストフードでバイトをしながら、ゴミ箱に廃棄処分された、ハンバーガーを食って生きていた。
「あの頃のお前の日記、悲惨なことしか書いてへんで。読んだろか?」
カイブツは勝手に、僕の日記のページを開く。
「別に読まんでええで。思い出したくないし」
カイブツは無視して、日記を読みはじめた。
「上京して 3 日後から、単独ライブのネタ作りが始まった。
12 月の寒さに震えながら、六畳のアパートで、ネタを考える。
ファーストフード店の出勤時間は、早朝6 時だった。一睡もせずにネタを作り、そのままバイトに向かう。
真冬なのに制服は半袖で、冬の寒さが、皮膚に刺さる。それでも寝てないから、働いている合間にも瞼を閉じそうになった。
帰宅してすぐに、パソコンで書いたネタを見直し、僕が作家をしている芸人さんに送る。
やっと眠れることがうれしい。眠ったら、一瞬でまた朝がやって来る。
今日のバイトは昼からだから、出勤の一時間前に家を出て、近所の図書館に行き、ネタを考えた。
漫才のボケを出しまくってから、バイトに行く。あまり寝れずにバイトに行くのが、その頃、当たり前になっていた。いつも、バイトの途中に眠たさのピークが訪れる。
バイトの休憩中にも、漫才のボケを出す。
生産されたハンバーガーは、 20 分経つと、賞味期限切れとみなされ、ゴミ箱に捨てられる。そのゴミ箱に捨てられたハンバーガーを、バレないように拾い、それを食べて、空の腹を満たして生きていた。ゴミ箱から拾ったハンバーガーを食べて、眠って、ネタ作りをして毎日は過ぎる。
その頃はいつも空腹だった。夕方にバイトを終えて、廃棄されるはずのハンバーガーを近所のスーパーの電子レンジを借りてチンして、そのバーガーを食べながら帰る帰り道が、その頃の生活の中で、最高に幸せな瞬間だった。 やっとありつけた食事だから、多少カチカチでも、死ぬほど美味しかった。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。