世界の壁は高くない——海外で成功するための教科書(廣済堂出版)
〈グローバル感覚の壁〉
「欧米だから」と十把ひとからげにしてはいけない
海外と日本人とでは、〝グローバル感覚〟にも壁があります。
ご存じの方も多いと思いますが、各国の世界地図は、その国から世界がどう見えるのかを象徴しています。
たとえば、日本の皆さんがご存じの世界地図は、日本が中心に、右側に米国、左側に欧州が現れます。
しかし、欧州の地図では、欧州が中心になっているため、日本は右側にあり、左側に米国があります。また、米国の地図では、米国が中心になるため、右側に欧州、左側に日本が配置されています。
つまり、グローバル戦略を考えるときに、国によって、「右に攻める、左に攻める」あるいは、「東に攻める、西に攻める」の意味や方向性が極端に変わってしまうのです。
地図はわかりやすい例ですが、こうした視点の違いや感覚の違いは、なかなか日本を離れないと気がつかなかったりします。
国を変えると感覚が違うということが、いたるところにあります。
壁といえば、文字通りの「国境の壁」もそのひとつです。
国と国に国境があるのは当たり前では、と思われるかもしれませんが、そんなに単純な話ではなく、「国境への感覚」に壁があるのです。
たとえば、イギリスについてです。日本人の感覚では、イギリスは欧州の一部、というイメージが強いのではないでしょうか。しかし、世界では「欧州は〜」と語るときに、イギリスは含まれていないことが多いのです。
ときどきイギリス人が、「欧州は〜」と語ることがありますが、そのときそこに自分たちは含まれていません。にもかかわらず、イギリスも含まれている欧州をイメージしている日本人が、これをそのまま真に受けてしまったら、ビジネスにおいて誤解が生じてしまうかもしれません。
イギリスは島国であり、イギリスと他の欧州は大陸が分かれています。陸続きではないせいかもしれませんが、イギリスでは明らかに他の欧州の人たちとは違う見方をします。
また、欧州における「欧州とイギリス」の感覚と同じように、日本人にとって、日本がアジアに含まれないという感覚があると思います。
しかし、欧米企業からすると、アジア本部に中国、台湾、韓国、シンガポール等の東南アジア諸国とともに、日本も含まれていることが多いです。欧州人からすると、日本人がもつ「欧州」のイメージと同じように、「アジア」ということでごちゃっとした同一地域に見えるのです。
面白いのは、そのイギリスとは切り離された欧州の主要国、フランス、ドイツ、イタリア、スペインは、それぞれまったく異なる言語を話す、ということです。イギリスを含めたら、五カ国で言語が同じところがひとつもないのです。
何がいいたいのかというと、日本人はついつい一口で「欧州」と語ってしまいがちですが、日本人にとっては同じように見える欧州の国々は、それぞれがまったく別の国だということです。
これもある意味、コンテクストが違うともいえます。
もしかしたら欧米から自分たちがどう見られているか、ということを少しでも考えてみると、わかりやすいのかもしれません。
たとえば、韓国、台湾、中国、香港、タイ、インドネシア、日本などアジアの国々があって、それぞれの国はほとんど違う言葉をしゃべっていて、文化も慣習も異なるわけですが、欧米の人たちは「アジア」とひとくくりにしてしまいがちです。
極端な話、韓国と日本はお隣同士だから、同じような国なのかな、と思ってしまっている欧米人もいます。しかし、当の日本人にしてみれば、言語は違うし、考え方もビジネスも、まったく異なるのに……となってしまうわけです。
しかし、「ドイツとフランスは大きく違う」というときに、日本人にはその感覚がなかなかもてません。ドイツとフランスは、日本と韓国くらい違う国だ、ということを、あまり想像ができないのです。
ですので、グローバルなビジネス、海外向けのビジネスというと、みんないっしょくたな感覚をもってしまったりします。
しかし、米国に進出するのと、ドイツでビジネスをやろうとするのとでは、当たり前なのですが、まったく違うものなのです。
ところが、「欧米だから」と十把ひとからげにしてしまうリスクが日本人にはあります。「国境」には、大きな意味があるのです。
日本人が思っている以上に、そこには壁があります。
海外でビジネスをするときに、忘れてはならないことです。
遠さと近さの難しさがある、欧州でのビジネス
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