しびれるような知的昂奮をもたらす新しい演出の可能性—『死の都』という文学[六]

20世紀最高傑作と再評価され、現在世界各国で上演されているオペラ『死の都』の最終回。ストラスブール版の現代演出の意図を追います。そして、この作品が、人間が過去に捕らわれつつも、生のエロスにつねに魅了され続けるという、生きることの本質をもっとも単純な形で力強く描き出していることに迫ります。

根底から意味を変えるストラスブール版の演出

 ストラスブール版もフィンランド版とは別の方向だが、かなり強い現代演出となっている。オリジナルのリブレットを根底から意味を変更しようとする意図すらが感じられる。この、作品の根底的な逆解釈の可能性、つまり、まったく異なる「読み取り」は知的な興奮をもたらす。古典を読み返すということは、古典をまったく新しい作品として再・創造するとも言えることを示唆する。

コルンゴルト:歌劇「死の都」 [DVD]
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 ストラスブール版では、第一幕のメインの舞台となる「去りし者の聖堂」は、場末の酒場か演劇小屋の楽屋か、という荒れた印象の部屋になっている。死者を悼む厳粛さはない。

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finalvent

「極東ブログ」で知られるブロガーのfinalventさん。時事問題や、料理のレシピなどジャンルを問わない様々な記事を書かれているが、その中でもとりわけ人気が高いのが書評記事。本連載は、時が経つにつれ読まれる機会が減っている近代以降の名...もっと読む

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