[参加者]
猫宮:出版社営業 27歳 彼氏なし
犬山:システムエンジニア 30歳 彼氏あり
兎川:システムエンジニア 27歳 彼氏なし
じじばばの孫狙いもあり!?
ジェーン・スー(以下スー) SEのおふたりは、お忙しそうですけど、出会いはあるんですか?
犬山 帰りが日によって夜の10時や11時になることもあり、忙しいですね……。うちの会社、社内恋愛がすっごく多くて。最近も、私の向かいに座っている同じチームの先輩が、2か月も前に結婚していたことを初めて知ってショックで。
兎川 同期どうしで研修の時に付き合いだして、そのまま結婚っていう人が結構多いんですよ。
スー すごい! 堅実! そこで下手に数を打たずに。すばらしいですね。
一同 (笑)
スー SEは男性の方が断然多いでしょ。出版社は会社にもよるかもしれないけど、女性の方が多いよねえ。出会いは?
猫宮 そうですね。うちの会社は女性が多いです。お二人がうらやましい。出会いがまったくなくて……去年、合コン強化年間みたいなことをしていました。年間で10回くらいやったんですよ。
スー お! 月に1本? すごいじゃん! 打ちに行ったんだ? 私も合コン1000本ノックみたいなことを目標に掲げていた時期があります。
猫宮 そうやってたくさん合コンしたのは、恋愛の師匠に「お前に足りないのは恋愛のサンプルだ」って言われたからなんですけど。
スー 経験を積めと。
猫宮 はい。私は女子校出身なんですけど、結婚願望はあっても彼氏ができないのは、知ってる男性が少ないことが問題で、比較対象が少ないと視野が狭まってるって言われて。経験を積んでサンプルを集めるために合コンを繰り返しました……が、結局無為な時間でした。
スー 合コンってそうですよね。「出会い」というか「知り合いはできた」けど……みたいな状況になりがち。
猫宮 そうですね。合コン後に1回デートに行って、その先につながらず……みたいなことは何回かありました。
スー どんな感じの男性がタイプなの?
猫宮 ちょっと変人が好きなんですよ。何かのオタクとか。自分の知らないことに詳しい人が好きです。
スー あーうんうん。そういう人、合コン来ないよね!
猫宮 そうなんですよ! それなんですよ!
スー この間も知り合いで、いわゆる「相席屋」といわれるような300円バーに出会いを求める20代の女子がいて。でも、よくよく話を聞いたら彼女の趣味は陶芸っていう。「陶芸好きな男性は300円バーにいないよ!」って言ったんです。何しに行ってんだか(笑)。
一同 確かに!
猫宮 私も趣味が陶芸なのですが、合コンにもいい人いないし、その辺にも転がってないし、もうどうしたらいいんでしょう。
スー サークルとかに入るしかないですよ。陶芸教室はどう?
猫宮 陶芸教室は、おじいちゃんとかおばあちゃんしかいないんですよ。
スー 孫がいるよ~、そのじじばばに。
猫宮 そこ狙いですか! そういうところを大事にしていくしかないですかね。
スー うん。しかも、じじばばを最初におさえてからって強いよ~! お義父さんお義母さんより先におさえてんだから。お祖母ちゃんに最初に相談できるんだよ!
猫宮 嫁姑問題も安心ですね。その作戦でいくかな。
女友達は元本割れしない財産
スー みなさん、今は仕事が楽しい時期ですよね。結婚願望はあるんですか?
兎川 私はすごくありますねー。
スー すごい食い気味(笑)。
兎川 それこそ猫宮さんみたいに、最近合コン強化月間を始めまして。2週間に1回のペースで、先月からもう4回行きました。でも、その後メールはもらうんですけど、1回デートして終わっちゃう。ピンと来なくて。そんな時にスーさんの『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』を読ませていただいたんですけど……。
『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』
スー すっごいフセンついてますけど大丈夫ですか?(笑)
兎川 思いのほかハッとすることが多くて。なんで結婚できないんだろうって自分なりにいろいろ考えていたんですけど、この本を読んで、まあ、独身が楽しいんだなという結論に至りました。
スー 結局そんなに結婚したくない自分に気づいちゃうんですよね。
兎川 結婚願望は人並みに、いや人並み以上にあると思っていたんですけど、友達と会っていたら楽しいし。
猫宮 友達で補えてしまう部分は結構ありますよね。
スー その「さみしくない」っていうのがよくないと言う人もいるんですけど、でも私、42歳になってあらためて、女友達は財産だと思いますね。60過ぎまで唯一目減りしない財産。60過ぎたら「死ぬ」っていう可能性が入ってくるんで、財産は目減りするんですけど、女友達は唯一元本割れしない財産なんですよ。
結婚のコツは大縄跳びと一緒。結婚に踏み出すコツがつかめない。
スー でも猫宮さんも兎川さんも、男性からすぐに結婚対象に入れられそうなタイプに見えますけど。
兎川 私は需要と供給が合わないみたいです。見た目がほんわかしているのか、「俺が教育してやる」タイプの男性に好かれやすい。でも実際は……。
スー そうじゃないんだね(笑)。
兎川 はい。男性から「支えてやるぜ」って態度を取られると、「いや、いい……」と引いちゃう。穏やかな人がいいなと思っているんですけど、付き合い始めると相手が「なんで俺の言うことをわかってくれないんだ」と主張を押しつけてきたり、前に付き合ってた人には、「1日3食作ってくれないと彼女の意味がない」って言われたこともあります。
スー ひどいね! それひどい!なんでそんな男と付き合っちゃったの?
兎川 その頃はまだ初々しかったので、「そうか、3食作らないと彼女失格なんだ」って殊勝に思っちゃって。でも、その人と別れてからはおかしいと思えるようになったし、どんどん強くなっていきました。
スー 今は自分の手で自分の人生を回すのが楽しくなりはじめちゃってる時期ですよね。これは……結婚できないよ? みんな、本当に結婚したいですか?
犬山 した……いのかな。
兎川 うーん。
猫宮 もはや考えるのをやめているところがありますね。
スー 考えて結婚できるなら私もそうしてるわ。でも、スッて結婚に行ける人はなんでだろうね。自転車とか大縄跳びみたいなもんで、できる人はできちゃうんですよね。
猫宮 大縄跳び、確かに!
スー 入れる人はスッて跳んでポーンって出ていくじゃないですか。
猫宮 そうなんですよ。その「コツ」がつかめないんですよ。
スー スッて行ける人は「とりあえず行けばいいんだよ!」みたいな適当なアドバイスしかしてこないですからね。
猫宮 縄跳びにひっかかる側としては、「行ってみるけど、ひっかかるんだよ」としか言えない。自分がなんでできないのかわからない。
スー どうも「不完全な自分と不完全な相手を愛す」ってことができる人は早いみたいですね。
でも、それって良い言い方をすればそうだけど、別の言い方をすれば「うっかり」ってことなんですよ。「うっかり」契約を結んでしまって、ひとまずその契約状態の中で最高の生活、最高のパフォーマンスをしようと努力するし、できなきゃ離婚になる。
犬山 そんなふうに腹くくるのがこわい。
一同 こわいねー。
スー 冗談じゃない!って思いますよね。
猫宮 今までの人生、わりと順調に階段を登ってきたので、ここでいきなり、結婚という自分ではどうにもできない「賭けをしろ」とか言われても、「えっ、無理無理」みたいな気持ちになりますね。
スー 出会いがあって、相手を精査しているうちに、いつの間にか自分が精査されてて振り落とされちゃって……というのが、私たちの世代で結婚しない人たちがやってきたこと。
35歳を過ぎちゃうと、自分の人生がほんとに超楽しくなっちゃうんですよ。この本にも書いたんですけど、20代の頃は自分が不安だから良い城に移り住みたくて、良い城の持ち主を探す。でもまあそんなね、住まわせてくれるような相手はなかなかいないわけです。そうこうしているうちに30歳になってくると自分の城を自分で確立できてきて、これと同じくらいの城を持ってる人じゃないと格好つかないな、という気持ちが出てくる。
35歳すぎると、もうこの城に誰も入れたくない、これ以上使い勝手のいい城はない、みたいな心境になってくるんですよ。本当に結婚したいというのであれば、この境地に至る前に気をつけてほしいなと思いますね。
親の「自立した大人になりなさい」と「まだ結婚しないの?」の矛盾
スー ご両親は「早く結婚しなさい」みたいなことを言ってきますか?
犬山 もう実家に帰るたびに「いつ彼氏連れて来るの?」って。「そのうちね」みたいな。はぐらかしています。
スー 『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな 』を読んで、犬山さんは何か思い当たる節とかありました?
犬山 いや、もう当てはまりすぎて。
スー (笑)。
犬山 私は単行本で読んだんですけど、そのとき私の周りの友人も独身を楽しんでいる人達ばかりで、みんなで「身につまされるね」って共感してました。
スー ねえ。全部やってますからね、私たち。自分の人生を自分で回すのが楽しくなってくると、自分以外の人と人生をくっつけるのが難しくなっちゃう。
同時に、自分以外の人生を尊重しないからそうなってるっていうことでもあるんですよ。彼氏のために善かれと思ってやってるんです、みたいなことを言う人がいるけど、それ完全に自分が相手をコントロールしたいだけだから。今は私も偉そうに言うけど、実際、私自身がずっとそれやってきました(笑)。
20代では、「なんで私は結婚できないの?」「みんな結婚し始めてるし……」と周囲に惑わされて不安になる。30歳になると、しなきゃなとは思いつつ、どう考えても優先順位が上がってこない。だって、結婚するならこれとこれとこれをやめなきゃいけない、えーマジか!って思う。
兎川 今まではそれでぜんぜん良かったんですね。結婚より優先したいことがあれば優先するし、本当に好きな人がいなければ無理して彼氏作らなくてもいいやと思ってた。だけど、この前実家へ帰った時に、父から「お前は孫を作る気がないのか?」と言われて。今までそんなこと一度も言われず自由にさせてもらってきたのに、突然言われて、心に重く響きました。
スー 結構シャレになんないよね。思うんだけど、だったら子どもの人生のベクトルが結婚しやすい方向に向くような教育を、親がしておけばいいと思うんですよ。結婚して子を持たせることが目標なら、都市部の4年生大学になんて行かせないで地元に置いとけやという。
スー 子どもにはずっと「勉強頑張んなさい。自分の人生なんだから好きに生きなさい」って教え続けてきて、子どもが30前後になった時、親の期待に相当真面目に応えてきた結果だというのにですよ、突然くるっとふり返って「結婚しないの?」って言ってくる。いきなり今までとぜんぜん違った発注来ちゃったから、「いや、そちらの部品は揃ってないんですけど!」ってなりますよね。それは無茶だよというね。
猫宮 結婚しやすいような、可愛げのある女の子がいいなら、そういう育て方があったんじゃないか、と。
スー いや、それが正しいかと言うとそうでもないのが難しいところですよね。今の時代、男の人がいないと食べていけない女の子というのは、生きるのが命がけになっちゃうじゃないですか。男の人が稼げない時代になったから、女の人も稼がないと家族が回っていかない。そこで「女の子は結婚するもの」「自立しなくてもいい」っていうふうに育てられていたら大変だったろうし、これはこれでよかったと思うんですね。
ただ、どこかで自分自身の中に親の価値観が残っていて、自分より稼いでいる人がいいとか、学歴は自分より上じゃないといけない、とか思っちゃう。自分も相当上に来ちゃってるから、自分で自分の可能性を狭めてる状態なんですよね。そこは早めに気づいておかないと。
もしも自分が自己主張の激しいタイプだったら、そんなに自己主張しないタイプの人と一緒に居た方がうまくいきますよね。でも、自己主張が強くないタイプで自分より稼いでる人ってまずいないですよ。バリッバリに仕事する自己主張のない人って、あんまり聞いたことない。
(後編につづきます)
※イラスト:サヲリブラウン