2014年冬。僕はコールセンターのバイトで食いつないでいた。
この会社は、能力順に座席が決められる。あまり人と話して来なかった人生を送って来た僕は、電話応対がとにかく下手で、会社で最下位の席に座らされた。電話応対が仕事のほとんどだったからだ。
カイブツはバイト中にも、僕にいろんな言葉を投げかけてきた。
「おい、情けない姿やのう。まさかドベの席なんてな。
お笑いであれだけがんばってきたのに、社会的には全部がノーカウント。
表面上では、普通に働いてるけど、お前のはらわたは、煮えくりかえっとるはずや」
現れたカイブツは、僕の耳元で、そうささやいた。
「消えろ」と、僕はカイブツに言った。
しかし、カイブツが言ったこと、そのすべてが図星であった。
僕の上司である課長は定年寸前の白髪の初老で、常に何かにイライラしている。
オフィスの隅っこの、遠く離れたこの席に座ってほどなく、僕が何をしていても、課長が怒鳴りつけて来るというのが、当たり前になった。
「お前だけなんでそんなに客応対が下手なんだ! 努力が足りない自分を恥じろ、パニック障害か……」
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