第2回】インフレ目標は時代遅れ 世界の金融政策運営の実態

世界を見渡せば、インフレ目標政策はもはや“役目を終えた”制度。日本がインフレ目標を導入するかどうか不毛な議論をしている間に、世界は“次”のステージに移行しようとしている。

 2012年5月、米ハーバード大学ケネディスクールのジェフリー・フランケル教授によるエッセイが、世界の“中央銀行ムラ”で話題を呼んだ。日本銀行の白川方明総裁も目を通していたようだ。

 その中身は実に衝撃的だ。「インフレ目標政策の死」と題され、“弔辞”の体裁で書かれている。いわく、1990年にニュージーランドで生まれたインフレ目標政策は、その成功からカナダや英国などの先進諸国に留まらず、世界中に広がっていった。だが、08年9月には明らかに命が尽きていた、というのだ。

 そもそも中央銀行がインフレ目標政策を採用するメリットの一つは、透明性の向上にあった。中銀は目標と結果の差について説明すればよいので、国民もそれを評価しやすいからだ。

 ところが、世界のインフレ目標政策採用国を悩ませたのが、住宅価格のバブル的な上昇だった。住宅価格はすぐには物価に影響しないが、資産バブルは重大な懸念材料だ。だからといって、物価が目標内に収まっている中で利上げの正当性を説明するのは難しい。ニュージーランドの中央銀行総裁は、その難しさを指摘していた。

 もっとも、長期的に見れば住宅価格の持続的な上昇は、確実に物価にも影響を及ぼす。そのため中長期で目標を達成することとすれば、住宅価格への対応も可能になるとの見解に変化していく。こうして達成期限は厳格ではなくなった。

 しかし、達成期限を中長期に緩めた「フレキシブル・インフレ目標政策」であっても、資産バブルへの対応はできなかった。それが、08年9月のリーマンショック発生によって明らかになったというわけだ。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

週刊ダイヤモンド

この連載について

初回を読む
日銀陥落【1】~安倍政権の危険なギャンブル 要求丸呑みの“舞台裏”

週刊ダイヤモンド

1月22日、日本銀行が安倍政権の要求を丸呑みする形で、2%の“インフレ目標”を導入した。「2%」とは実現可能な数値なのか。はたして日銀は、政府の要求を何でも聞くようになったのか。日銀陥落の真相に迫る。本誌・新井美江子、池田光史、中村正...もっと読む

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません