ロボットは人を幸福にできるか?
—— 幸せ因子の中でロボットでもできることってないんですか? ここに書いてあることって、全部人間がメインですよね。
前野 ロボットがもっと人間や生き物らしくなってくると可能ですね。そしてそれは実現しつつあります。例えばアザラシ型ペットロボットの「パロ」を使った事例があります。認知症の方々は普段一人で座っていることが多いんだけど、パロがあると「かわいいね」とか会話をはじめる。「このアザラシのパロくんは北極海から来たんですよ」って言うと、「へーそうなんだ」と信じて、会話がけっこうスムーズに流れる。
—— つまり認知症の人が生物だと思うくらいにはロボットは進化しているってことですよね。
前野 そう。もうちょっと進化すると、みんなが「やっぱりこいつ生きているよ、人間もロボットも変わらないんだから、やっぱり同じだよね」っていう時代が来るのかもしれない。現実的な話だと、コンシェルジュとかって形があるかもしれないね。
—— Siriとかですね。そう考えると、ロボットにも人を幸せにできそうですね。
前野 そうですね。でもね……新聞記者の人とかにもよく「ロボットと幸せをつなげた話を」って言われるんだけど、僕はそこにはあまり興味がないんですよ。
—— それはどうしてなんですか。
前野 うーん。そもそも人間もロボットだと思っているからかなあ……。わざわざつなげる必要が思いつかない。
—— まあそうですね……。でも、人間がロボットだって言ったときに多くの人が拒否反応を示すのはどうしてなんでしょうね。みんな自由意志を持っていると思っていたいんでしょうか。
前野 そうでしょうね。別になくていいじゃんと思う人は少ない。
—— そこが重要なんじゃないですか? 自由意志を持っているという要素って、「あなたらしく因子」ですよね。
前野 本当は自由意志なんてないんですけどね。
—— でも、持っているという実感というか、コントロールできているという幻想が重要なわけじゃないですか。
前野 ある種の人にとってはね。両方の人がいるんでしょうね。
—— 前野さんは自由意志がない派なんですよね。
前野 うん、幻想派。あると感じられるけどそれは幻想。だから本当はないと思ってる。
—— 幸せはコントロールできるって知ったときに、「そうか、じゃあやってみよう」っていうのは自由意志じゃないんですか?
前野 自由意志のような、脳のニューラルネットワークの反応ですよ。