ロボットと仏教
—— 石黒浩さんは仏教関係の方と交流があるそうなんですけど、前野さんはどう思いますか。ロボット研究と仏教ってどこか共通している部分があるんでしょうか。
前野 完全に同じだと思っています。対象は。アプローチのしかたは違いますけどね。僕の本を読んで、曹洞宗の人が「ふつうの僧侶より仏教のことがわかってる」って言ってましたよ。
—— おもしろいですね(笑)。でもそれ、わかります。っていうのは、前野さんの「受動意識仮説」も「幸福学」も宗教の言ってることじゃないかなと思ってて。
前野 そうですね、近いですね。ブッダが言ってることとも近いし、キリストの言ってることとも近いですよ。
—— 今の自己啓発のなかには現世利益かつ、自分のことしか考えてないものが多いなと感じます。自分の成功の話ばっかりで、パートナーや周りにいる人のことをケアするって視点がないんですよ。でも、社会で生きていくなら他者貢献が重要だと僕は思っています。ただ、じゃあ仏教がそうかというと、仏教も元をたどると社会性を捨てて悟るという話なのでそことはちがうような気がしますが……。
前野 仏教は他者貢献しない、と。
—— そういう視点はないというか、そういうものを超えているというか……。ゴータマ・ブッダの思想というのは、業と輪廻が基本になっているんですが、『ローヒタッサ経』という教典に書いてあるそうなんですけど、彼は世界(ローカ)そのものが苦なので、世界を終わらせないといけないって言ってるんです。確かに、有名な出家のときの話も、子供に「煩悩(ラーフラ)」なんてDQNネームをつけて踏んで出て行くとか、けっこうヤバいですよね。
前野 確かに、仏教は社会性の話からは始まりません。しかし、たとえば、大乗仏教には慈悲の心があります。
—— でもそれの発想って後付けっぽくないですか?
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