「億千万!」の連呼を拒む、いきものがかりの右の人
紅白歌合戦が始まって、私たちが毎年真っ先に確認するのは、司会者の緊張具合などではなく、司会者と司会者の間に陣取るのはやっぱり和田アキ子なのかどうか、という一件ではないか。今回もやっぱり定位置を譲らなかった。今回の紅白は視聴率の低迷を受けて「不信の紅白 マンネリ化目立つ」(Yahoo!トピックス見出し)との評定を食らっているが、「演出がマンネリ気味」なのではなく「出演者に求めるスタンスがマンネリ気味」との評定が正しいのではないかと思う。
冒頭の郷ひろみ「2億4千万の瞳」、ステージ上に連なった出演者の面々の中から「億千万!」の連呼を拒んでいるわずかな人を探し当てると、いきものがかりの右・山下穂尊である。彼は自分たちの特集本のなかで、読んだ本の一冊として唐突に別冊宝島編集部『日本の右翼と左翼』を挙げており、ただ者ではないとの把握だけをしていたが、宴のスタートにふさわしい態度からもっとも遠い姿を躊躇せずに晒していたのが彼だったことは特筆すべきだろう。もう少々探究して、そのうち本コラムで取り上げたい。
水森かおりのカメラアングルに疑問
改心した与沢翼のような風貌の三山ひろしや山内惠介など、男性演歌勢の新鋭を目立たせたことは明らかに今回の新機軸だったが、それぞれ「我が子・我が孫が紅白に出られるなんて……」と感極まる母や祖母を客席に用意するという安全パイが、むしろその鮮度を薄めていたように思う。その前日のレコード大賞で三山ひろしは、けん玉を披露しながら歌うという秘技にチャレンジするもおおよそ失敗、それでも笑顔で乗り切る、というアクロバティックな演歌を見せつけていただけに物足りなかった。
小林幸子の豪華衣装が復活した件については言及しないことを持って態度の表明としたいが、結果としてこの数年豪華衣装枠を担ってきた水森かおりの存在感が薄らいだ感は否めない。はばたく火の鳥に乗って歌い上げた水森だが、サイドから映したカメラアングルが頻繁に挟み込まれ、「クレーンの先っぽに鳥がついている」という滑稽な構図が目立った。躍動感を出すためには、もっともっと正面やや上方からの構図を多用すべきだった。なぜセットの仕組みを明らかにするカメラアングルが多かったのだろう。巨大な力が動いた、と、根も葉もない噂を残したくなる。
「またこれか」と言いたくても言えない
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