“観光”にハマる日本、次の課題は「イケてる爆買い」【第82回】

爆買いからラグビーまで話題に事欠かなかった2015年。今回は流行のスペシャリスト、電通総研の松本泰明さんをゲストに昨年の「話題注目商品」について語ります。来る2020年東京オリンピックを前に、日本のグローバル化やインバウンドはどう進んでいくのか。日本に必要な「ディスカバー・ニュージャパン」とは?

年末年始(2015~2016)の主なできごと
・キンコメ解散 高橋容疑者は事務所解雇 相方今野が謝罪(12月29日)
・心斎橋の象徴 大丸本館が閉館(12月30日)
・「初日の出暴走」取り締まり、首都高などで13人摘発(1月1日)
・Perfumeのっち、マンボウやしろの両事務所が熱愛を否定「友人の1人」(1月1日)
・青山学院大39年ぶり完全優勝 全員駅伝で連覇=箱根駅伝・復路(1月3日)


左から、速水健朗、松本泰明、おぐらりゅうじ

2015年を席巻した「爆買い/インバウンド」

おぐらりゅうじ(以下、おぐら) 今回は、電通総研の松本泰明さんを交えて、今年電通総研が発表した「話題注目商品」の話をします。

松本泰明(以下、松本) 実は「話題注目商品」というのは1985年から電通総研で発表しておりまして、今年は記念すべき30周年なんです。
 2015年のランク上位は、「爆買い/インバウンド」が1位、「錦織圭」、「ラグビーワールドカップ」、「マツコ・デラックス」、みたいな感じで並んでます。さらに、12月1日に発表されたユーキャン新語・流行語大賞も1位が「爆買い」だったということで、インバウンドは大きな話題だったかなと思います。

速水健朗(以下、速水) でも、インバウンドを今年の消費傾向だとするのって、ちょっと違和感はあります。この現象をもたらしているのは、円安と中国人の入国制限の緩和であって、広告や需要喚起といったものとはジャンルが違う。こちらから見ると、消費と言うより、供給の枠なんじゃないですか?

松本 確かにそこは考えるところではあります。ただ、爆買いが日本人の消費マインドを刺激したところもある気がします。「レモンジーナ」や「南アルプスの天然水&ヨーグリーナ」、あとハーゲンダッツの「華モチ」シリーズとか、どれも発売2日で予測を上回る売れ行きから販売一時中止されていました。

おぐら 巷では「品切れも込みで戦略じゃないの?」なんて声もありましたが。そもそも「爆買い」というネーミング自体、ネガティブな意味合いを持たせてますよね。「ちょっとやり過ぎじゃない?」という。

速水 まあでも、敬意を払って上品に言っても仕方ない。日本人も、80年代にパリのルイヴィトンのショップとかで「爆買い」してた時代は嘲笑の対象で、そこから学んでいったわけで、ある種の通過儀礼なんじゃない?

松本 この「話題注目商品」のための調査のなかで、インバウンドについて聞くとですね、日本の製品がよく見えることはいいことだという意見がある一方、日本が観光客ばかりになることへの反発も半分くらいありました。

おぐら 空港から乗り付けた観光バスによる交通渋滞とか、観光地や店舗における観光客のマナーに苦言を呈している人は多かったですね。とにかく別の文化を持った外国人と直に接することに馴れていないので、戸惑っている感じはします。

速水 観光客の受け入れ国としては、日本はまだ新米ですよね。そもそも排他的な傾向の強い国だし。中国で中間層の人口が爆増している一方で、日本を含む先進国では中間層が減っていくと言われている。そこで中間よりもちょっと上志向みたいなものによる消費が増えてきている気がする。

「世界で通用する日本」アピールの増加

松本 このランキングの中では、「グラノーラ」が29位に入っています。

速水 ほかに入ってもよさそうなものでいうと、「サードウェーブコーヒー」や「ミニマリスト」も入れていいと思うけど。

松本 「クラフトビール」とかもですかね。

速水 「クラフトビール」は、世界的な流行だよね。アメリカの社会学者のリチャード・フロリダが「グレートリセット」と呼ぶ、リーマンショック以降に年収10万ドルくらいの層で起きている消費傾向の変化。日本では、こうした「脱消費」の流れが、サブカルチャー的に消費されている気もする。「サードウェーブ系男子」が本当に脱消費とは思えないというか。

松本 サードウェーブ系男子、流行ってましたね(笑)。

速水 この名前を付けたのは辛酸なめ子さんですけど、それがネットでちょっとバズったりした感じです。でも「サードウェーブ系男子」が階層にひもづく意識変化なのか、単なるサブカルチャー的な消費なのかはちょっとわからない。

おぐら 脱消費というか、新しい消費のスタイルとも捉えられるので、その意味では、あくまで消費文化の中で生まれた流行のひとつという側面もありますし。

松本 いわゆる、ポートランドスタイルと言われるライフスタイルもそのへんに入ってきますかね。それでいうと、26位で「近藤麻理恵(こんまり)」が入っていたりするのも、そこの文脈に近いのかもしれません。

速水 「近藤麻理恵(こんまり)」は、「世界で通用する日本」の文脈でもあるかな。「ラグビーワールドカップ 2015日本代表」「錦織圭」とかと一緒みたいな。

おぐら 「魔法」っていうぐらいですから、日本の二次元・アニメカルチャーの匂いもしますね。ちなみに、近藤麻理恵が顧問を務める「日本ときめき片づけ協会」というのもありますよ。
※近藤麻理恵さんの著書『人生がときめく片づけの魔法』では、「一度片づけたら、二度と散らからない方法」を記し、なぜか「仕事がうまくいった」「3キロやせた」などの声が続出。片付け以外にも様々な効果をもたらしている。

松本 「ノーベル賞」はここ最近入り続けてるんですけど、「錦織圭」や「ラグビー」は、「日本が強いはずないじゃん」くらいに思われてた分野が突然世界でポジションを獲得したという共通点があります。

速水 さっきの日本人が爆買いしていた時代って、日本が「エコノミック・アニマル」と呼ばれてもいた。今は、それどころか何物でもない存在に落ちて、「世界に通用する」を日本人が自らもてはやすようになっているということだよね。

おぐら ここ何年か、テレビ番組でやたらと世界における日本人を褒め称える企画が増えたのも、その象徴ですよね。

すべてにおいて観光が最重要視される
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おぐらりゅうじ /速水健朗

政治、経済、文化、食など、さまざまジャンルを独特な視線で切り取る速水健朗さんと、『TVブロス』編集部員としてとがった企画を打ち出し、テレビの放送作家としても活躍するおぐらりゅうじさん。この気鋭のふたりのライターが、世の中のニュースを好...もっと読む

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コメント

monaken 日本のイタリア化まっしぐらという感じ。 1年以上前 replyretweetfavorite

mats3003 アップされてますわ。かなりでかでかと写真出てて恥ずいw 1年以上前 replyretweetfavorite

motoji_etoile グラノーラ、サードウェーブ、クラフトビール、ランチパスポート、ちょい飲み。 >電通総研の松本泰明さんをゲストに。 1年以上前 replyretweetfavorite