ここは東京西新宿。医療器具メーカー「ドブ板メディカル株式会社」では、今日も朝から、
屑谷先輩「お前さぁ、なんでそうなの? こないだも言ったじゃん」
陽太「す、すいません……」
と、3年目営業出来内陽太(デキナイヨウタ)がハードに先輩に激ツメされていました。
しかし、陽太も慣れない営業職を3年間続けてきただけはあります。30分も立ち説教が続くと、その表情は真剣そのものですが、頭の中は、
昼、何食べようかな……。カレー? カレーかな……。
カレーのことでいっぱいです。
屑谷先輩「おい! 聞いてるのかよ!」
陽太「は! はい! 辛口で!」
先輩の話など全く聞いてはいません。
それを見て屑谷先輩はため息をつきました。
屑谷先輩「本当にお前って言っても無駄だよな。もういいよ」
陽太「は……はあ……」
本当に屑谷先輩苦手なんだよな……すぐ怒るし、言い方きついし……。
陽太がとぼとぼと自分の席に戻ると、
屑谷先輩「あ、瑠雨図ちゃん~」
今度は打って変わって、屑谷先輩は猫なで声で、営業事務の瑠雨図奈乃(るうずなの)さんを呼び止めました。
瑠雨図さん「はい、なんですかぁ~?」
瑠雨図さんは陽太の数少ない同期ですが、
屑谷先輩「こないだもらった発注書、ここの数字間違ってたよ」
瑠雨図さん「あ、ごめんなさーい」
ちょっとうっかりさんなのが玉に傷の3年目事務です。
屑谷先輩「いいよ、今度から気を付けてね」
にこやかに笑う屑谷先輩を見て、陽太は目ん玉が飛び出しそうになりました。
何!? 何!? あれ!? なんで、先輩は瑠雨図さんにはそんなに優しいの!? 差別!?
心の中に嫉妬というどす黒い感情が沸き起こる陽太なのでした……。
陽太「はー……今日もいっぱい怒られた……」
仕事を終え、ため息をつきながら会社を出ると
瑠雨図さん「陽太くん!」
と、陽太は瑠雨図さんに声をかけられました。
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