2015年12月——。師走の仕事が雪崩れ込む最中、新創刊の女性誌『FF』から企画の依頼をうけた。「40女的メン・オブ・ザ・イヤー」。今年、輝いていた著名人をあげて、読者への推薦理由をつづって欲しいのだという。
『FF』とはファンタスティック・フィメールの略称。ターゲット読者は、DKJ(団塊ジュニア)、ポストDKJである30代後半~40代前半とのこと。私と同じアラフォー世代だ。
第一線で働く女ではあるが、ひと昔前のバリキャリというよりも、もっとリラックスして仕事や人生に向き合い、質のいいファッションやカルチャーも楽しみたいという女性たちに向けたライフスタイルマガジン。つまりは、『GQ』の女性版のイメージか。
2015年を代表する男か……。これって、この季節になるとさまざまな雑誌が行う、恒例の企画だ!
『週刊SPA!』の「男が選ぶ好きな男・嫌いな男ランキング」、一般女性を選出対象にした『日経ウーマン』の「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」……etc. 雑誌のカラーにより、選出方法や選出されるメンバーは多種多様だけれど、いずれも、今年活躍した人を称えるとともに、1年を振り返る。
中でも注目度が高く、権威がありそうなのが『GQ』の「メン・オブ・ザ・イヤー」である。何といっても世界19カ国で発行されているインターナショナル誌であり、メディア出演も多い名物編集長・鈴木正文氏が率いる雑誌。ちなみに、2006年からスタートした「GQ メン・オブ・ザ・イヤー」は、初回に安倍晋三首相が受賞者のひとりに選ばれ、授賞式の様子はニュース番組でも大々的に放映された。
受賞者全員がハイグレードな黒のタキシードで現れるという演出もふくめて印象的で、“何だかスゴイ賞”という認識がある人は私だけではないはずだ。
GQは、松岡修造の日めくりカレンダーも楽しむウィットのある男
今年、「GQ メン・オブ・ザ・イヤー」選ばれたのはこの6人。
・五郎丸歩(スポーツマン賞)
・鈴木亮平(ブレークスルー賞)
・又吉直樹(インスピレーション賞)
・松岡修造(スポーツ・アイコン賞)
・葉加瀬太郎(スペシャル・アチーヴメント賞)
・吉田鋼太郎(レジェンド賞)
“GQが選んだ 時を掴んだ男たち”というキャッチコピーに違わない人選。こういう賞は、1人だけではなく、数人をアンサンブルで選ぶことに意義がある。
GQの表紙にも登場した五郎丸、又吉、鈴木の3人は、時の人であり、女子人気だって高い。
おそらく、誰がどの雑誌で選出しても、“メン・オブ・ザ・2015”に選ばれる人たちだろう。 松岡修造はさておき、葉加瀬太郎と吉田鋼太郎を選ぶところに、GQの自我が感じられる。両者ともにまごうことなき実力をもって大活躍していたし、吉田氏に至っては認知度を高めたのは間違いない。けれど、同程度にブレークスルーした人なら他にも山ほどいるわけで(とにかく明るい安村、厚切りジェイソン、ゲスの極み乙女とか)。
世界基準の知性とセンスをもったファッションカルチャー誌たるGQとして、選んだのがこの2人であり、ひいてはこの6人のアンサンブルなのだ。 これって、デート中の女子に「音楽は何を聴く?」とたずねられた時、ホントはB’zが9割でも、「基本は60年代後期の洋楽かな。最近なら、Avicciとかアデルも聴くけど、邦楽は、結局、B’zに戻るよね」とならべて自己の奥行きを主張することに類似している。
松岡修造の日めくりカレンダーをウィットに楽しみ、吉田鋼太郎の舞台における存在感の凄みに敬意を表し、葉加瀬太郎の天才的な音楽センスを評価する——それが、GQらしさである。
S気のある男と子供のような男とイケメンマインドが眩しい男
「メン・オブ・ザ・イヤー」的な企画には、雑誌のカラーやセンスを主張するという裏目的がある。では、新雑誌『FF』が選ぶなら? 雑誌のカラーを示しつつも、人生いろいろなアラフォー女性たちに、ぜひとも、おすすめしたい男性は誰か。
とはいえ、こういう企画は客観性だけで選んでもつまらない。撰者の私的な感情や見解を主軸においたほうがおもしろかったりもする。
よし、両方、加味して決めよう。私はパソコンの前に座りなおした。