黒歴史】私は"メンヘラ"だった【ではありません】

“メンヘラ”とは、もともと「心の病を患った人」を指すネットスラングです。でも今ではすっかりカジュアルに偏在しつつある“メンヘラ”。その樹海から脱け出したスイスイさんが、我が身を振り返りながら、今さら聞けないメンヘラの基礎の基礎、そしてその謎の力を解明します。スイスイさんはどのように心の闇を解き放ち、ハッピーリア充に生まれ変わったのでしょうか。
cakesの姉妹サイト「note」とのコラボ企画「cakesクリエイターコンテスト」の入選者、スイスイさんの連載がついに始まります。

“メンヘラ”とは
言うなれば、トゲだらけのゴディバ、崖の端でヒール、紙で出来た雨傘、
マグマのウォータースライダー、24時間営業の修羅場、重量級の愛!
元来は「心の病を患った人」を指すネットスラングである。


私は“メンヘラ”だった。

どのくらいメンヘラだったかというと、軽音楽部でボーカルで「いますぐきて」が口癖で、会えば「私のこと好き? 嫌いになった? まだ好き? ほんと? 本当に?」を繰り返し、「毎日そばにいるから」と言われたいがために手首を切り、「不安にさせてごめん」が主食で、わざと吐き、わざと倒れ、激痩せし激太りし、物を投げ、折り、砕き、裸足で国道に飛び込むくらいには、メンヘラだった。

だけどいまどれくらいメンヘラじゃないかというと、自分のこと「メンヘラでした!」と宣言できるほどに大卒業してる。

そんな私が今では、CMプランナーを経てコラムを書きながら、広告代理店勤務の夫との間に現在第二子妊娠中、雑誌やラジオに出演し首相夫人と共にシンポジウムでスピーチしたりとまさに、メンヘラの完全対義語、<100%リア充だよー!!!!>になったという、地球の反対側の北欧のおとぎばなしみたいな壮大なスペクタクルについて、連載する事になりました! お母さんありがとう! どうか読まないで!

伝説上のほとんどのメンヘラがそうであるように、あのころ私は自分がメンヘラだとまったく気づいていなかった。

自分のことは、普通の「愛情あふれて、繊細で感性が豊かすぎて、可愛くて放っておけない19歳」だと思いこんでいた。

このことは、「登山」と「遭難」が、「山にいる」という点でほぼ変わらないにもかかわらず決定的に違うという事実に似ている。

ただ山を登っていただけのつもりが、気づいたら樹海に入っていて、気づいたらこんな風にこんなところで遭難していたのか! という全貌は、だいたい脱出したあとヘリコプターの上からしかわからない。

それと同じで「大学生」と「メンヘラ大学生」は「大学にいる」という点でほぼ変わらないにもかかわらず決定的に違うのである。


序章である今回は、だいたい左手首に複数の傷がある「メンヘラ」という種族について、今さら聞けない!という基本をおさらいしていきたいと思う。

諸説あるけど私個人がたどり着いたメンヘラの定義は、まず第一に「壊されたい人」である

注意してほしいのだが、「壊れたい人」ではない。徹底的に「壊されたい人」なのだ。自分のまわりに建てた巨大な壁を乗り越えてきてくれる誰かとともに、その壁の中に2人だけの世界を作り、その世界を、自分まるごと“劇的に”壊されたい。

その壊され方や壊された時のダメージが派手であればあるほど快感を覚える。あくまで無自覚に「壊れがいのある愛」だけを壮大に育むのだ。

実際、当時19歳のわたしは、高さ4メートルほどのコンクリートの壁がまわりにそびえ立つ、部外者進入禁止の寮に住んでいた。象徴的すぎるが比喩ではなく、リアルにだ。

深夜、カッターナイフと共に巻きたての包帯部を握りしめながら、町中を徘徊する姿は世にも奇妙な変質者だ。

さらに、壁の外へ何度も「いますぐ来て」「いま会えないと死ぬ」という趣旨のメールを送りまくっては、そのそびえ立つ壁をわざわざ越えて我が部屋にお越しいただくというルーティンが成立していた。
これは、コントだ! 他人から見たらコントなんだけど当事者としては本気、私の記憶では実際に、2.5人の男性がそのいわゆる愛のボルダリングをしてくれていた。

悲報である。
そう。メンヘラにまつわる話は、実際すべて残念だ。

だけどいま、あらためて問いたい。
あれは本当にただの、残念で恥ずべき若気の至りだったのだろうか?

たしかにその頃私は、生粋のメンヘラ。「痛い」というよりほぼ「激痛」で、歌手になりたいと言い出して大学を辞める!と言ったり、劇団四季に入る!といって劇団のオーディションを受けたりするほどに、完全なる迷走系メンヘラ日本代表だった。

そのうえに大失恋につぐ大失恋、もともとの迷わず、人の携帯を見る!!!という癖も相まって、自分が彼女と思っていたのに浮気相手だった事がわかったり、失恋の相談相手がその彼と関係を持っていたり、深刻な“メロどん底”だった。要するに、犬も喰わないような、でもヒロイン気分にメロメロに酔えるガーリーなドン底である。

メンヘラにとって、傷は自分の証明、むしろ大好物であるし、“どん底”レベルでいうと「いかに深く沈めるか合戦」なはずなんだけど、その頃の私はもはや、マイナスにマイナスをかけ算しすぎて一周回って「無」だった。あまりにも傷つき痩せ、毎日泣きすぎ意識も朦朧とする闇の中、はてと思った。

ここは、とんでもなく大きな宇宙規模の樹海なのでは?
もう簡単にはここから抜け出せないのでは?

そんな危機を感じ、一種の防衛本能から満を持して驚異的なメンヘラ脱出大作戦をスタートさせることになったのである。
そう。それは、2007年のことだった。


これからの連載で、そこから2015年現在に至るまでのその具体的なテヘペロ大作戦のワンダーアトラクションについて解説するんだけど、その大作戦を経て私は、勝間和代さんの「断る力」ばりの、「メンヘラ力」にたどり着いてしまったのである。

この物語を私は、メンヘラや元メンヘラやメンヘラと付き合ったことのあるメンヘラご関係者はもちろん、これまでメンヘラに出会ったこともない人にも知らせたい。メンヘラというレッテルを貼られた、情動が制御できない人のほとんどは激しく誤解されている。

メンヘラとは、無差別に恋愛やセックスに依存しまくったり、無意味に手首を切る人ではない! メンヘラは負の遺産などではないこと、応用次第で相当な力を発揮すること、それは人類だけが辿り着いた力であることを伝えたい。メンヘラは黒歴史とは限らないよ! と実証したい。

あなたがどこの誰だとしても、メンヘラを決してあなどってはいけない。
“メンヘラ”という言葉の奥にあるものは、あなたの脳をM字に開き、現場の最前線に引っ張りだすほどの、脅威になりかねないのだ。もちろんハッピーな意味で。


次回「【当店のメンヘラ】カレーが飲み物なら、メンヘラは持ち物です【メニューはこちら】」は1/11(月)更新予定。


スイスイさんのnoteはこちら!

スイスイさんが見出されたnoteでの「cakesクリエイターコンテスト」の模様はこちら!


この連載について

メンヘラ・ハッピー・ホーム

スイスイ

“メンヘラ”とは、もともと「心の病を患った人」を指すネットスラングです。でも今ではすっかりカジュアルに偏在しつつある“メンヘラ”。その樹海から脱け出したスイスイさんが、我が身を振り返りながら、今さら聞けないメンヘラの基礎の基礎、そして...もっと読む

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tabiwakame67 注意してほしいのだが、「壊れたい人」ではない。徹底的に「壊されたい人」なのだ。自分のまわりに建てた巨大な壁を乗り越えてきてくれる誰かとともに、その壁の中に2人だけの世界を作り、その世界を、自分まるごと“劇的に”壊されたい。https://t.co/DymMEAARrg 5ヶ月前 replyretweetfavorite

e_rewhon スイスイ『私個人がたどり着いた 7ヶ月前 replyretweetfavorite

e_rewhon スイスイ『「登山」と「遭難」が、「山にいる」という点でほぼ変わらないにもかかわらず決定的に違うという事実に似ている。ただ山を登っていただけのつもりが、気づいたら…!という全貌は、だいたい脱出したあとヘリコプターの上からしかわからない>https://t.co/bzUVCWkJrT 7ヶ月前 replyretweetfavorite

caitsith0215    当事者だから遣っていい言葉がある、という大前提で、と。 9ヶ月前 replyretweetfavorite