ドナルド・トランプが人気の3つの理由
前回に引き続き、荒唐無稽な大統領候補トランプが人気を集める3つの理由を解き明かしていこう。
1)中産階級の白人が抱えている鬱憤を、ストレートに代弁してくれる
2)複雑な問題に対して、シンプルな答えを与えてくれる
3)マインドコントロールがうまい
現在のアメリカの問題は、収入格差にある。 下記のふたつの表をみればわかるように、上位0.1%に属する少数の金持ちが持つ富は、下方90%が持つ富の合計と等しく 、70年代にはアメリカの過半数だった「中産階級」(ピュー研究所の定義では、国民の平均年収の2/3から2倍。2つ目の表の黄土色の部分) が消えつつある。
縦軸:資産の比率 横軸:西暦 水色:上位0.1%の富裕層、紺色:下から90%の家庭
この中産階級の白人がトランプの支持者だと言われている。
the Atlanticの記事によると、トランプ支持者の半数は高卒かそれ以下の学歴で、大卒以上はたったの19%だという。38%はアメリカの平均所得(2014年の調査では51,939ドル)を下回る収入で、高所得者はあまりいない。とりたてて共和党のイデオロギーを信じているわけではなく、熱心な宗教右派でもない。そして、バブル経済の「良き時代」を覚えている世代が多い。
ピュー研究所によると、現在の有権者の39%が共和党(と共和党より) で、民主党は48%である。減少しているとはいえ、人口の50%を占める中産階級が団結すれば二大政党を超える支持層になる。
このグループは、かつては世界でナンバー1の大国アメリカを代表する存在として誇りを持って生きてきた。ところが、現在のアメリカでは、ろくに英語も話せない移民の2世が有名大学に入り、トップ10%に属する高収入の職についている。かつては裕福な白人だけだった町に、肌の色が違う移民が豪邸を建てて住み着いている。それを彼らは唖然として眺め、首をかしげる。 「自分たちが誇りに思っていたアメリカは、いつの間にか移民に乗っ取られてしまった」 「『景気は回復した』と政治家は言うが、なぜ自分たちの収入だけは不景気のときのまま回復していないのか……?」
その結果、「自分たちの生活が苦しくなったのは、移民のせいだ」と他人のせいにしたい白人が増えても不思議はない。
彼らは、リベラルな政治家のせいで公の場で人種差別できないことすら不満に思うようになっている。「白人のほうが差別されている」という苦情が噴出するのはそのせいだ。
そこに現れたスーパーヒーローがドナルド・トランプである。 トランプは、彼らが口に出せずにいたことを、堂々と語ってくれる。
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