2015年12月18日、全世界の大いなる熱狂によって迎えられたスター・ウォーズ・シリーズの最新作『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』。前作『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(’05)から10年ぶりとなる第7作目である。作品の権利がディズニーに売却されたことから、これまで製作を担ってきたジョージ・ルーカスの手を完全に離れ、新しいクリエイターによって作られる、初めてのスター・ウォーズとなった。強力な軍事力を持つ組織ファースト・オーダーと、銀河の平和を求めるレジスタンスとの新たな戦いがテーマとなっている。監督は、『SUPER8/スーパーエイト』(’11)、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(’13)などで知られるJ・J・エイブラムス。
これほどに続編を撮るのがむずかしい作品もないだろう。40年近い歴史を持つシリーズの新作をどう提示し、多くの世代にまたがったファンをいかに納得させるのか。こだわりの強いファンに支えられたスター・ウォーズの新作に必要なのは、大胆な方向転換や奇抜なアイデアでは決してなく、ファンの頭のなかにあるスター・ウォーズのイメージにできるだけ沿った正解を導き出す作業になる。
なぜならスター・ウォーズのファンは、みずからの理想的なスター・ウォーズのイメージを想像のなかで組み立て、ほんらいの映画以上に完璧な世界をつくり上げようとするやっかいな習性を持つためだ。とあるファンの有名な言葉を引用するならば、「僕たちが愛してやまないのは、スター・ウォーズの映画ではなくスター・ウォーズという概念そのものなのだ」*1。
ファンたちは、玩具店でおもちゃのライトセーバー(劇中に登場する特殊な剣)を買い、自宅で振りまわし、しばし恍惚にひたる。その瞬間に脳内で広がる無限のイメージが「スター・ウォーズの概念」である。それは時に、映画そのものよりも重要だ。スター・ウォーズは、見た者に参加と創作をうながす。それは絵やまんがを描くことであったり、パロディビデオの製作であったり、登場人物の扮装であったりする。そうして多数の観客がスター・ウォーズの世界で各自のクリエイティビティを発散していくうちに、世界中で「スター・ウォーズという概念」が大きく広がったのだ。
どれだけの模倣やパロティ、引用が行われたか、もはやカウントすることは不可能である。それはすでに、映画そのものを超えて自立した運動を始めてしまっている。「もうキャラクターはできているし、物語の舞台も帝国もある。何もかもが用意されているんだ」*2とジョージ・ルーカスはいう。単に作品を見るだけではなく、実際に参加し、その枠組みのなかで想像力とクリエイティビティを発散できるからこそ、スター・ウォーズはここまで大きな支持を得られたのではないか。
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