みうらじゅんは「徹子の部屋」に招かれない

故・ナンシー関さんの名連載「テレビ消灯時間」が1月1日発売の臨時増刊号『週刊文春Woman』でこのたび復活。それを記念してcakesに特別掲載いたします。今回は1995年に書かれた、ご長寿番組「徹子の部屋」分析です。「テレビというものが有難いものでなくなってしまって久しい」掲載当時から、「徹子の部屋」が芸能界で果たしている重要な役割とは?

テレビが有難いものではなくなり、変わったこと

テレビというものが有難いものでなくなってしまって久しい。テレビに出てるから偉い、なんてのも陳腐な話である。しかし一方で、我々は人がテレビに出る事に理由を求めるフシもある。

テレビに出ることと生産行為がほぼ一致する、いわゆる「芸能人」は置いとくとして、それ以外にもテレビの中の有名人は多い。芸能人に対して文化人とでも呼ばれている人たちだ。この人たちにとって、テレビに出る事は副業であり、本業は別にある。でも、こういう人達には「テレビに出ること自体」の理由を求めてしまう。

正統派の理由として多く認められているのが職業・肩書きの類である。作家、芸術家、評論家、あと、政治家、医者、大学教授なんかは「テレビに出る資格ある職業」とされているようだ。ここに引っかかる事ができない場合でも、特技か特徴を持っていれば理由となる。何の肩書きを持つでもなく、何ができるわけでもない人がテレビに出ていたら、この人はどうしてこうやってうつっているのだろうと、私たちは悩むはずだ。そしてその悩みは、その人がおもむろに鼻から牛乳を飲んで目から出したりしてくれたら解決するんだが。

蛭子能収とみうらじゅんの違いは「徹子の部屋」

さて、何でこんな話をしているかというと、私は他にもうひとつ「テレビの有名人」のニュアンスを確認するものさしとして「徹子の部屋」をいつも用いているのである、という話がしたかったのだ。

漠然とした「有名人」というくくり方の中で、たとえば同じマンガ家でも蛭子能収さんとみうらじゅんさんをどう区別するかという問題がある。二人とも「よくテレビに出る」「マンガ以外の分野でも広く活躍」「若者に人気」「個性的なルックス」「ガロ出身」など共通点も多い。

しかし、私の中にある「徹子の部屋」ものさしを使えば、明確に分ける事ができる。


「蛭子さんは『徹子の部屋』に招かれるが、みうらさんは招かれない」という分類だ。断わっておくが、実際の出演経験の有無は関係ない。蛭子さんが実際に「徹子の部屋」に出た事があるかどうか知らないし、みうらさんが出ていないという確証はない。そういう問題ではない。

招かれるのと招かれないのとどっちがいいとか悪いとかではなく、あくまでもニュアンスの伝達手段としての方便である。

「イーストエンド×YURIは招かれるがスチャダラパーは招かれない」m・c・A・Tはもっと招かれそうなニュアンスを持っているが。

「やくみつるは招かれるが高橋春男は招かれない」この二人を比較すると、どっちからも怒られるか。でも書いちゃったから仕方ないや。

「内田春菊は招かれるが、まついなつきは招かれない」

「猪瀬直樹は招かれるが佐高信は招かれない」

「ホンジャマカは招かれても爆笑問題は絶対招かれない」

などなど際限なく挙げることができる。

芸能人度と“あの花だらけのソファ”

このニュアンスの区別は、おそらく「徹子の部屋」冒頭の、黒柳徹子が丸暗記したゲストの経歴をあの早口で紹介するシーンになじめるか否かにあるような気がする。決して間違った事は言っていないのだが、何故か上っ滑りな言葉の羅列によって浮かび上がらせられる「虚」な感じの自分像、みたいなものを受け入れられるか、もしくは全く無視できるかでなければ、あの花だらけのソファに座ってはいられまい。

また、あのソファにどれだけ違和感を漂わせずに座れるかというのは、芸能人度(肩書きや特技などの“テレビに出るべき理由”なしにテレビの中にいてどれだけ人を納得させられるかの度合い。頂点には加山雄三あたりがいると思われる)のバロメーターでもある。しかし白竜は、私の中ではどちらかというと「招かれない」に属する人だったのだが。招かれたか。ま、招かれたとしても、その事実はさして重大ではない。白竜は白竜だもん。

《1995年6月29日号より》

ナンシーさんへの一言
ナンシーさんの予言が的中したのか、蛭子さん(テレ東の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」で何度目かのブレイク中)は「徹子の部屋」に招かれましたが、みうらさんはいまだに招かれていません。ソラミミ安齋肇さんだって招かれたのに~。爆笑問題だって何度も出てるのに~。

次回「今、タモリはあらゆることに対して無抵抗だ」は2016年1月1日更新予定

ナンシー関さんのコラムの続きは、ぜひ『週刊文春Woman』で!
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この連載について

スペシャル再放送】テレビ消灯時間

ナンシー関

39歳で亡くなった伝説のコラムニスト、ナンシー関さんの大人気連載「テレビ消灯時間」が1月1日発売の臨時増刊号『週刊文春Woman』で復活します。1993年から『週刊文春』で始まったこの連載で、ナンシーさんはテレビに蔓延する「もやもや」...もっと読む

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コメント

Triangularmouth 今の時代のナンシー関さんのコラムがとても読みたい https://t.co/ZTqNgYy8zO 2年弱前 replyretweetfavorite

kiq “白竜は、私の中ではどちらかというと「招かれない」に属する人だったのだが。招かれたか。”こーゆーセルフのボケ・ツッコミ文体は今もネット上でよく見る。おれも書いたことあるかも 3年以上前 replyretweetfavorite

abm ナンシー関、復活! 3年以上前 replyretweetfavorite