第9回】津田さん、ウェブでどう世界は動くんですか? ① ~津田大介×加藤貞顕 特別対談~

新刊『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)が評判になっている津田大介さん。今回、この本を書くに至った経緯に始まり、政策決定過程や日本の政治の問題点、また、津田さんが考える「ウェブと政治との関わり方」について、cakes編集長の加藤貞顕がお伺いしました。

当初のタイトルは『ウェブで政治が動く!』でした

加藤貞顕(以下、加藤) 津田さんの新刊『ウェブで政治を動かす!』、すごくおもしろかったです。

ウェブで政治を動かす!
ウェブで政治を動かす!

津田大介(以下、津田) ありがとうございます。瀧本哲史さんからは「まあ政治の本だから売れないよねー」って言われましたけどね(笑)。

加藤 この本、最初は『ウェブで政治が動く!』ってタイトルだったんですよね。

津田 そうですね。

加藤 当初から「この20年くらいネット、ソーシャルメディアによって政治が変わってきましたよ」ということを概観する企画だったんですか?

津田 ネットと政治をテーマに本を作ろうというのが決まって、企画が動き始めたのが3年前くらいから。実際に取材が始まったのは、2010年の春くらいからでしたね。

加藤 タイトルを、『ウェブで政治が動く!』から、『ウェブで政治を動かす!』にしたのはなにか意図があったんだと思うんですが……。

津田 勝手に政治が動くというよりは、むしろもっとアクティブに「自分で動かしていく」っていう意識が重要だなと思うようになって、『ウェブで政治を動かす!』になりました。でも、ジャーナリストの竹田圭吾さんがブログでこの本の書評を書いてくれたときに、「タイトルが違ってるよね」と。

加藤 え、タイトルが違う?

津田 『ウェブで政治を動かす!』じゃなくて、正式なタイトルは『あなたが政治を動かす!』だよねと。まあ確かに、ウェブを使って「あなたが政治を動かす」のが正式なタイトルではあるので。だから、間違ってはいないけど、「主語は実はウェブではなくて、この本を読んでいる読者のあなたですよ」っていうことなんです。主語との対応っていう意味では、「あなたが政治を動かすんだよ」と、発破をかけてる意味では、まあそんなに悪くはないかなと。

ここ数年で、一番ネットと関わりが深まったのは「政治」だと思う

加藤 そうなんですね。この本は、この20年くらいの政治の状況とかをすごくよくまとめてあって政治の勉強になるんですよね。そしてそれと同時に、最後の「終わりに」が特に良かったですね。相当「終わりに」に力入れて書いてますよね?

津田 そうですね。

加藤 津田さんの想いだとか、ご自身の考えが一番伝わってきて面白かったです。

津田 僕の本は、全部そうなんですけど、一番書きたいことをあとがきで書く。だからどれもあとがきに力が入ってるんです。ぶっちゃけ僕の本って本文はあとがきにつながるまでの長い助走とも言える。

加藤 ずいぶん長い助走ですね(笑)。

津田 あとがきで言いたいことを理解してもらうために、本文がある。『Twitter社会論』(洋泉社新書y)も『動員の革命』(中公新書ラクレ)もそう。だから、あとがきだけはほかの章と文体を変えているんですよね。

加藤 ちなみに、僕が本を作る時は「はじめに」と一章に力を入れてますね。

津田 そっか! だから僕の本は売れないのか!(笑)

加藤 いやいや、そんなことないでしょう(笑)。「おわりに」を読んで思ったんですが、津田さんが目指しているのは、学生や若い人がもっと積極的に政治に参加していくことなんですよね。

津田 これまでもそうなんですけど、僕の本のターゲットは学生向けに書いている気がしますね。大学生とかがこの本を読んで、「ああ面白い、こんな可能性があるんだ」みたいなことを気にとめておいてほしいかなと。

加藤 あとは、やっぱりネットと政治の関わり方の変化が気になりました。

津田 僕は昔から、ネットと社会の関わりっていうのはずっと書いてきているんですよ。ここ10年間ずっと、両者の関わりが大きくなっていって、社会がどう変わるのかとか見てきている。社会でいろんな動きがある中で、ここ3年くらいで一番ネットと関わりが深くなったのはなにか。それは、政治だと思うんですよ。それで今回は「政治」をテーマにした本が、書きたかったんです。

テレビの報道は、審議会の冒頭だけ撮影したら、帰ってしまうもんなんです

加藤 なるほど。ちなみに、本の中では「まず政局でなく、政策を重視すべきだ」という点を大きなテーマにしていると思うんですけど、そのお話をお伺いする前に、政策の決定過程の話をしたいです。政策が決まる過程に、委員会や審議会などがありますが、これらは全部クローズドな状態で審議されますよね。本の中では、「こうした政策決定過程を情報公開することによって、みんなが参加できる。だからこそ、オープンにしていきたい」と書かれています。でも、そもそもこうした工程で政策が決まっていくっていうのは、普通の人はほとんど知らないことですよね。

津田 そうなんです。一応テレビのニュースでも「国の審議会が開かれました」と報道されるけど、あれ実は、1回目にTVカメラが入ってて、最初に座長があいさつするところを撮って、その最初の部分を撮り終わるとみんないなくなってるんです。

加藤 えっ!? 報道陣は冒頭しかいないんですか?

津田 そうそう。もう驚きですよね。

加藤 絵だけを押さえにきてるってことですか……。

津田 記者も会場には一応いるんだけど、でも実は彼らは官僚から「こういう風に決まるよ」っていうレクを事前にもらってるんですよ。それに、そもそも資料があるし、どうせ審議はその通りに決まる。だから、彼らからすれば、ちゃんと取材しなくても、簡単に原稿書けちゃうんだよね。

加藤 全然審議になってないじゃないですか……。

津田 もちろん、たまには議論の流れで「これをひっくり返そう」みたいな、当初の予定通りにいかないという面白いこともあるんだけど、たいていは官僚が書いた絵の通りに進んでいくんですよね。だからメディアも大体興味なくて、絵だけおさえて、中にいる記者がササッと原稿を書いちゃうんですね。

加藤 それがニュースや新聞に流れているわけですね。

津田 自分が現場にいると、「これで決まっていくんだ」「ここで起こっていることがあの夕方のニュースになるのね」っていうのが初めてリンクするんですよ。そこで「えっ、本当にこんな決め方でいいのか?」という実感が湧いてくる。

加藤 この「審議会」っていうのは、必ずあるんですか?

津田 すべての役所の省庁の中に、必ずあります。

加藤 あらゆる政策ができるときに、必ず行われているんですか?

津田 議員立法の場合は別ですね。議員立法の場合は、議員たちが党内で研究会とかをやったりして議員たちが決めていくので。

加藤 でも、政策は役所が作ることのほうが多いじゃないですか。

津田 その場合は、全部、審議会をやっているんですよ。

加藤 この会議は本当に不思議な会議で、審議するメンバーで誰を呼ぶかも役所が決めるわけですよね。人数は1回大体何人くらいになりますか?

津田 審議会の規模にもよるけど、大体10人から30人でしょうかね。

加藤 1回の会議はどのくらい時間がかかるんですか?

津田 通常は2時間ぐらい。ものすごい議論が紛糾している時や、ヒアリングがある時とかは、3時間ぐらいになったりします。

加藤 なるほど。これを何回くらい繰り返すんですか?

津田 それもばらばらですね。とくに課題みたいなのがない場合は、月に1回くらいのゆっくりしたペースで開かれるんだけど、ダウンロード違法化のときは、委員会では議論が途中から全く進まなくなったので、そういう時は回数が増えました。

加藤 一応、そこは突き詰めるんですね。

津田 官僚もやらなきゃいけないっていう意識はあるんですよね。多い時は1週間に1回。とにかく回数を増やしていましたね。通常は1ヶ月に1回程度。喫緊の課題とか主張が分かれるものだと2週間に1回ぐらい。これを半年~1年ぐらいやりますね。

ケイクス

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Commitment2.0—そろそろコミットしてもいいんじゃないの?

津田大介

普通のひとが普通に、身近で切実な社会問題を変えていくにはどうしたらいいのか? ジャーナリストの津田大介さんが、自身のこれまでの経験や考え方、具体的な手法などのエッセンスをここで公開しながら論じます。眉間にシワをよせない、楽しく明るい社...もっと読む

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