これまでにつかんだあの日の足取りはこうだ。
三月四日月曜日の朝七時三十分、おまえはホームレスシェルターのボランティア仲間とともに食べものと毛布を配った。午前九時四十八分、寮の守衛、カーリーン・ローパーが勤務についていて、おまえが戻ってきたのを記録している。ルームメートのナンシー・グリッグスは十時十五分に陶芸センターに出かけていった。おまえは疲れた様子でベッドに横になっていたと語っている。英語の教授は正午からの講義におまえが出席していたことを覚えていた。彼は詩人エドモンド・スペンサーに関するおまえのレポートにいくつか改善点を指摘した。活発な議論があったことを覚えていた(その晩、彼はキャンパスの反対側で講義していたことがわかり、容疑者から外された)。
午後一時ごろ、おまえはテート学生センターに行き、ヴェロニカ・ボールヒーズと一緒にグリドルチーズサンドイッチとサラダを食べた。
その後についてはやや正確さに欠けるが、証言記録にもとづき保安官はおまえの行動を次のようにつなぎあわせた。おまえはある時点で大学の学生新聞の事務所に立ち寄り、大学側が学食を民営化しようとしていることについて意見を述べた。その後デイヴィッド・コンフォードという別の男子学生とラウンジにあるソファでくつろいだ。彼はおまえに、REMのリードボーカル、マイケル・スタイプがその晩にやって来るらしいと話した。近くにいた友達たちはコンフォードが一緒に行こうと誘っていたと証言したが、彼はデートに誘ったわけじゃないと主張した。
「ぼくたちはただの友だちでした」と彼は述べていた。取り調べを行った副保安官は、それ以上の関係になりたいと思っていたのは明らかだというメモを残している(その晩マンとコンフォードはふたりとも学生センターにいるのを目撃されている)。
午後四時三十分ごろ、おまえは学生センターを出て、自転車をセンターの外に置いたまま歩いて寮に戻った。おそらく冷え込んできたためにバクスター・ヒルの坂を自転車で駆けおりたくなかったからだろう(二週間後、自転車はセンターの外の柵にチェーンでつながれているのが見つかった)。
守衛によれば、午後五時までにおまえは寮の部屋に戻っていた。ルームメートのナンシーも、〈マンハッタン・カフェ〉にマイケル・スタイプが来るとおまえが興奮して話していたことを覚えている。おまえたちはほかに何人か誘って一緒にでかけることにした。ナンシーが何人かに電話をかけた。みな未成年だったが、おまえはドアマンのジョン・マカリスターを高校時代から知っていた。待ち合わせの時間は午後九時三十分に決まった。
春休み前に心理学の試験が予定されていたために、おまえとナンシーは図書館に行って勉強した。午後八時三十分ごろ、おまえたちの姿は〈タコ・スタンド〉で目撃されている。メインキャンパスの入口にある黒い鉄製アーチのはす向かいにあるレストランだ。おまえたちは料理を部屋に持って帰った。開けっぱなしだった裏口から入ったため、夜間の守衛、ベス・ティンダールという女性はおまえの入室を記録していない。
階上に上がり、おまえとナンシーはシャワーを浴び、外出のために着替えた。おまえはローファー、ブラックジーンズ、男ものの白いボタンアップのシャツ、刺繍の施されたシルバーとゴールドのベストを着ていた。手首にはシルバーのバングル、首には妹のロケットをかけていた。
おまえが共同シャワー室から洗面道具を入れたワイヤーのかご(寮の部屋からは見つかっていない)を持って帰ってきたかどうか、ナンシーは思い出せなかった。ただ、シャワー室に放置してあるものは盗まれるか捨てられるかされると話している。
午後九時三十分、でおまえは友人たちと合流した。ドアマンのジョンがなかに入れてくれたが、マイケル・スタイプが来るという噂は嘘だと教えられた。だれかがバンドはアジアツアー中だと言い、別のだれかはカリフォルニアにいると言った。
これにはもちろんがっかりしたが、おまえたちはそのまま残って酒を飲んでいくことにした。月曜日の夜だった。おまえ以外はみな翌日授業があり、これがのちにおまえの不利に働くことになった。というのもナンシーは、おまえは洗濯ものを取りに実家に帰ったと思い、わたしたちはおまえは大学にいると思っていたからだ。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。