昔から、自分のことを怪獣だと思っていた
—— 米津玄師という人間のパーソナリティについても深く話を聞ければと思います。まず、米津さんの描くイラストには女性が多く登場します。男性の顔を描かないのはどうしてですか?
『Bremen』画集盤より
米津玄師(以下、米津) うーん……。絵を描くとき、男を描くのは本当に嫌だったんですよね。それは男を描いてしまうと、嫌が応にも自分を投影してしまうからで……。傍から見ても、そこに自分が投影されているように見られてしまう。それが本当に嫌だった。
—— なぜ嫌だったんでしょうか。
米津 自分は昔から、自分のことを怪獣だと思っていた節があって。普通じゃないというか。
—— なにかきっかけとかあったんですか?
米津 幼稚園くらいのころに、唇を怪我したことがあって。病院に運ばれて、何針か縫って、その日のうちに幼稚園に戻ったんですね。そうしたら、みんなが集まっていて、入ってきた僕をまるで異物を見るような目で見た。その記憶が強くあって、その瞬間から「自分は普通じゃなくなってしまったんだ」と、ずっと思い込んでいたんです。だから自分の姿形が嫌いだし、いまだに映像や写真で自分の顔を見るのは本当に嫌なんです。
—— そのことが絵を描くときにも影響している。
米津 そうですね。女の子を描くのはすごく好きなんですけど、男を描く時には冷静ではいられなくなる。だからあえて頭に紙袋をかぶせたり、頭がテレビになってたり、そういうキャラクターを描いていた。
そういうものに自己投影して「自分はこういう存在なんだ」と思いながら描いていたんです。
—— 米津さんのイラストにはたくさんの怪獣が登場しますよね。それも自分自身を投影したものなんでしょうか。
米津 そうですね。そういうものに対して共感するし、自分自身を表現するときには、どうしてもそうなってしまう感覚はあります。
—— そういう怪獣や異形のものと女の子が楽しそうに同居しているモチーフは、イラストや「フローライト」などのMVに繰り返し登場していますよね。これはご自身で改めてどのようにとらえてますか。
米津 究極を言ってしまうと、俺がオタクだからだと思うんですけどね。二次元の女の子に理想を投影している。その女の子と仲良くなってるのはあくまで怪獣であって、それは自分を投影しているものなんですけど、それでも自分自身は介入しないという。
—— ただ、米津さんの描かれる女性像は、いわゆる萌えやアニメキャラのタッチとは違いますよね。凛としていて、男性に媚びていないような印象があります。
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pixivより