「自然の本能に従えば、異性愛になる」は正しいのか?
古代ギリシャやローマなど、馴染みの薄い、カタカナばかりの名前で疲れたかと思うので、今回はちょっと趣向を変えて、生物学的な観点から少年愛に迫っていきましょう。
折しも、先月、海老名市で、ある市会議員が、「同性愛は異常動物」と発言して物議をかもしました。
アイルランドで同性婚が合法化されるなど、世界中でLGBTの権利が認められていくなか、日本の地方政治を担う人が、こういう認識でいるという事実は、大変暗い気持ちにさせられます。
議員は、あまり歴史に詳しくないのかもしれません。本コラムをお読みの方でしたら、分かりきったことでしょうが、こころみに同性愛体験が確認されている、偉大な政治家をあげてみましょう。
アレキサンダー大王、カエサル、アウグストゥヌス、武田信玄、織田信長、徳川家康、劉邦、武帝
この人たちが「異常動物」だったのでしょうか?
また、議員は自然の本能に従えば、みんな異性愛になると思っているようですが、そもそもこれが間違い。実は本能のままに生きているはずの動物たちも、大らかな同性同士の性愛を楽しんでいるのです。
同性愛を楽しむ動物たち
これまでに、同性愛行為が確認された種を列挙していくと、ハエなどの昆虫から、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類と多岐にわたり、その数は1500種をこえます。特に同族の哺乳類を見ると、これまで紹介してきた少年愛の起源を垣間見るようです。
例えば象は、オス同士でキスしたり、互いの口にあの長い鼻を入れたりして、きずなを深めあいます。異性間のカップルがすぐ別れるのに対し、同性同士の関係は長く続き、大抵が年長の大人象と未熟な若造ならぬ若象の組合せです。
面白いのはキリンで、彼らの場合、観察される交尾の実に90%!がオス同士によるものだそうです。
キリンのオスは、繁殖期にメスを争って、首相撲を行います。長い首を刀のように打ち合う音が、バチーン、バチーンと、サバンナ中に響きわたるのですが、実力が伯仲していると、なかなか決着がつきません。汗まみれの争いが長く続き、そして……
「キリ夫のやつやるじゃないか。こんなに強かったなんて。それに、あんなに必死の顔で……よく見るとまつ毛は長いし……首もしなやかで美しい。あれっ、なんだ、この感情!?」
こうして、いつの間にか首相撲がネッキングになり、果てはアナルセックスにまで至ってしまうのだそうです。自分を巡って闘っていたはずの2匹が、何故か目の前でおっぱじめてしまうのを見せつけられる、メスの心境ははかりがたいものがありますが、この性交渉は喧嘩がエキサイトして、致命的なものになるのを回避させる効果があるようです。
また、人間に近い霊長類でも、同性愛は行われており、なかでも、ゴリラのそれは、本コラムのテーマにも一脈通じる、大変興味深いものとなっているようです。今回は、京大学長で霊長類学者の山極寿一教授の著作をもとに、森の哲人たちの、密林の奥でのひそやかな愛の営みをひも解いていきましょう。