A.モテの秘訣は「自分好き」なこと! 自分に自信を持つ荒岩流モテ術は必見!
荒岩家は、みんなとにかくモテる。
荒岩はいかつく、「見るからにモテそう」なタイプとはほど遠いものの、なかなかにモテる。数年間に渡って部下の木村夢子に思いを寄せられていたし、花椎商店街の定食屋・きんしゃい屋のママにひと目惚れされたりしている。
妻の虹子も負けてはいない。
虹子は80年代生まれの漫画キャラクターらしく「メガネを外すと案外美人」というギミックのキャラクター。その美人っぷりは荒岩の部下の田中が思わず惚れかけるほどだ。しかし、虹子は別に眼鏡ギャップキャラとしてのみモテているわけではない。
虹子は文化部の新聞記者。虹子と一緒に五島列島のイシダイ釣りの取材に行った後輩・山岸は虹子のガッツあふれる仕事ぶりを見て、惚れかけている。取材の帰り、山岸は荒岩家に招かれて虹子の釣ったイシダイを荒岩がさばいて姿造りにしたものをごちそうになるが、荒岩と虹子の仲のよさを見て静かに「あんなだんなさんがいたんじゃかなわないな……」と静かに身を引くのだ。
山岸、荒岩の前に散る©うえやまとち/講談社
息子のまことも小学生の頃から学校のマドンナさなえちゃん(まことの本命の彼女となる)、同じクラスのえっちゃん、同じアパートに住む年下の女の子・純子ちゃんなど、多くの女の子からモテまくり、まことをめぐって壮絶な三角関係が繰り広げられるほどだ。高校生になっても同じ水泳部の後輩女子・橋本から猛烈なアプローチを受けたり、大学生になっても同級生のあゆみちゃんに好かれたり、しまいにゃ母親と待ち合わせしているときに通りがかりの女性ふたりから逆ナンされたりしている。
まことに関しては、無差別に女性を引きつけるなにかがあるとしか思えないようなモテっぷりなのだ。
DNAの絶妙な配合により、童顔+水泳で鍛えたマッチョボデーという奇跡のモテルックスを手にしているというのもまことの強み©うえやまとち/講談社
荒岩の母・カツ代も50歳を過ぎて、自分が賄い婦として勤めていた病院の院長・吉岡氏と再婚。しかも60歳になるまで医療一筋で生きてきた吉岡氏が初めて恋をしたのがカツ代という、なんともロマンチックなシニア婚。
ここまでくると荒岩家のDNAにはモテが組み込まれているとしか思えない。 しかし、モテまくる荒岩家で唯一モテていない人物がいる。娘のみゆきである。
みゆきだって、アクティブで友達も多く、人を喜ばせることが大好き。明るくキュートな女の子だ。なのに幼稚園のときに好きになったくにひろくんには失恋、小学校高学年になった今でも男女混合グループで遊んでいるが彼氏と言えるような男子はいない。みゆき自身がまだ恋愛モードではないのもあるのだろうけど、一番仲のいい男友達の一樹からも、恋愛的なアプローチはなし。小学生の頃からモテまくっていた兄のまことと比べると、うーん……。
みゆきの恋愛エピソードは、幼稚園時代止まり。しかもこのあとくにひろくんには親友のリナともども速攻でフラれている©うえやまとち/講談社
荒岩家だけがなぜモテる? 親から子に伝承される荒岩家のモテ術とは
みゆきはともかく、クッキングパパ一家のモテの秘密がわかるようなエピソードがある。
小学生4~5年生(推定)のまことが、クラスの違うガールフレンド・さなえちゃんがクラスメイトの男子に猛烈なアプローチを受けているのを知り、「さなえちゃんが自分以外の男子にとられてしまうのでは……」と嫉妬と焦りで落ち込むというエピソードがある。
いまでこそモテモテなまことでも、こんなに悶々としている時期があったのだ。さなえちゃんは学年一の美少女。こんな気苦労も当然と言えば当然かもしれない。
そんなまことを静かに見守っていた荒岩だが、眠れない夜を過ごすまことに荒岩は「どうした 眠れないか? 昨日から元気がないなっ」と優しく声をかける。まことはガールフレンドのさなえちゃんが他の男子と仲良くするのを見て悔しい、という気持ちを荒岩に打ち明けると、荒岩はこう言う。
「そりゃあ仕方がないな、さなえちゃんは誰としゃべっても誰と一緒に帰ってもいいんだし ただ——そのことでおまえがショボくれてしまってはだめだっ!! まことのいいところがなくなる」
「元気がなくてうじうじとおちこんで暗いやつはさなえちゃんだけじゃなく誰からももてないぞ!さなえちゃんが誰と話したっていいじゃないかっクラスが違っても気にしないっ! まずまことが元気に輝いていないとなっ」
「そのためにはまずおいしいものをたっぷり食べてぐっすり眠るっ でないと出そうと思っても元気が出ないぞ!!」
この一点の曇りなき、なんだか凄みすら漂う正論はなんだろう……。
父から子へ、モテ術継承©うえやまとち/講談社
私のような凡庸な人間はモテるモテないの話をするときに、やれモテるファッションだ、やれ異性はこんなことを期待しているだとか、そういう情報を求めてしまうが、荒岩家は違う。
「病むな! いっぱい食え! よく寝ろ!」……まるで大一番を前にした柔道家に送るアドバイスのようだ。つまり「心技体」の心と体を整える、まずはそれからだ荒岩は言っているのだ。
まるで武道の家元のようなモテ術ではないか。
このモテにつながるかどうかわからないようなモテ術に一瞬「なにを言ってるんだ……」と思ってしまうが、「相手の自由を尊重する。嫉妬や疑心を無駄にこじらせない。自分のよさを活かし、自信を持つこと。それには元気でいることが一番大事!」という荒岩の言葉は、恋愛関係のみならず人間関係を築くにあたってとても大切な、基本とも言えることだ。これらのことができずに小手先のモテスキルなど身につけても、お寒い結果になることは目に見えている。
少しでもモテたい人は、自己啓発本や恋愛マニュアル本をかなぐり捨て、荒岩のセリフにアンダーラインを引いて2、3回読み、ガッツリごはんを食べて早めに寝ることをお勧めする。
荒岩家はとにかく自分好き?
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