生涯ペダルを漕ぎ続ける人々

残すはフィリピン政府からの認可だけ……。しかし、半年待たされる学校もあるという。戦々恐々としつつ、僕らは審査書類を提出した。そして自分用に現地でのアパートの確保。食材はどこで買えばいいのだろう? 

 当初はフィリピンに行くたびにホテルに泊まっていたのだが、お金もバカにならないし、その都度大きなスーツケースを持って移動しなければならないので、現地でアパートを借りることにした。セブポットの西田さんに話を伝えると、賃貸物件を幾つか案内してくれた。しかし、ちょっと遠かったり狭かったりでなかなか触手が動かない。ある日、ちょっと引っ込んだところにある物件に連れて行ってもらって、なんとなくその佇まいが気に入った。空いている部屋を見せてもらっていると「松井さん?」と声をかけられた。振り返るとそこに見覚えのある顔がある。
「松井さんですよね? どうしてここにいらっしゃるんですか?」

「……? どちらさまですか?」

「Sです。以前松井さんを取材させていただいた………。」

「あれ、ここに住んでいらっしゃるんですか?」

「はい!」

「いや、ここに住もうかと思って見に来たんです」

 そんなふうにして僕とSさんご夫妻とお隣同士になった。時々夕方、日本の英語教育やフィリピンの英語学校のあり方について話し、ためになる話を色々と聞かせていただいだ。

借りた住まいはそこそこ快適だった。

 このアパートで、およそ20年ぶりに一人暮らしが始まった。最初のうちはどこでどのような食材を買えばいいのかもわからずかなり四苦八苦した。お皿や調理器具などもだんだんと揃えて行った。インスタントラーメンを見つけて作ってみたら、ドンブリがなくて鍋から食べた日もあった。

 驚いたのは着色料の使われ具合だった。この辺りの基準はたぶん相当ユルい。日本だったら昭和50年代に禁止されているような合成着色料が未だに使われているという話だった。例えば、ある日ソーソージを買ってきて茹でてみると、鍋の水がたちまち真っ赤っかになった。もったいないから食べてしまったが、なかなか勇気がいる。

 電子レンジにコーヒーメーカーと順にそろえて行った。日本でもアメリカでも見たこともないメーカーの製品が並んでいて、どれを買うと無難なのかさえもわからない。それでもだんだんと生活が立ち上がってくのは楽しかった。

「ハナビシ」というフィリピンのナショナルブランド。電子レンジもこのメーカーのを買いました。

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フィリピンで起業しました

松井博

2015年6月6日、フィリピンのセブ島にて英語学校を開校しました。起業への思いや、設立までの「フィリピンあるある」などなど、思い立ってから9ヶ月間の足取りを綴っていきます。

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コメント

hage_69 ペダルを漕ぐ人とリムジンに乗って帰る人は対して変わらない 3年以上前 replyretweetfavorite

Matsuhiro フィリピンには一生自転車のペダルを漕いで終わりそうな人生を送っている人がたくさんいます。いろいろな意味で価値感を揺すぶられる経験でした。 3年以上前 replyretweetfavorite