岸壁から滝の流れる絶景の横をボートで進む「高千穂峡」

一度は見てみたい奇妙な景色やモノたち、けどそんなに力をいれずに気の向くままにでかける旅。人気紀行エッセイシリーズ第3作『日本全国津々うりゃうりゃ 仕事逃亡編』より、宮崎編を4回に分けて短期連載します。まずは担当編集者の身に起きた不幸から物語は始まります。

テレメンテイコ女史の災難

 携帯が振動したので、見ると、テレメンテイコ女史からメールが届いていた。

「バスに乗られていないようですが、別の交通機関で来られるのでしょうか?」

 文面は事務的だったが、それはテレメンテイコ女史ならではの表現であって、明らかにそこには焦りと失望、そして怒りが混じっているのが感じられた。長い付き合いだから、私にはわかる。

 テレメンテイコ女史とは、熊本から宮崎県の高千穂へ向かうバスの車内で落ち合うことになっていた。先に熊本に立ち寄っていた私が、熊本駅前からバスに乗り、そのバスに熊本空港からテレメンテイコ女史が乗り込む段取りだった。

 メールは、その高千穂行きバスの車内から届いているのである。

 私はこのときまだ熊本にいた。バスに乗ってないどころか、レンタカーで古代の城などを観光して回っている最中だった。

 私はすかさず返信した。

「午後便に乗るつもりですが、午前便の約束だったでしょうか」

「午前便です。そうお伝えしてなかったでしょうか」

 すっかり午後便だと思っていた。あらためて記憶を呼び起こしてみたが、どっちだったか心もとない。私の勘違いであったか、それともテレメンテイコ女史の手違いか。行程表があるわけではないので、よくわからない。とはいえ、相手は段取り魔のテレメンテイコ女史である。この場合80%ぐらいの確率で、私が勘違いしていた可能性があった。

 んんん、しまったしまった。しまったけれども、もうどうしようもない。

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日本全国津々うりゃうりゃ 仕事逃亡編

宮田珠己

脱力系エッセイの名手にして、巨大仏・ウミウシ・迷路旅館などヘンテコなものの目利きとして知られる宮田珠己さん。新刊の旅エッセイ『日本全国津々うりゃうりゃ 仕事逃亡編』でも、その独特な選択眼に思わずくすりとさせられます。宮田さんが最近、注...もっと読む

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