中山美穂の出演時には「作詩」と表記されていた

瞬間最高視聴率20.2%をマークしたフジテレビの『FNS歌謡祭』。例年通り豪華なコラボレーションによる名曲が続くなか、目玉となったのが18年ぶりにテレビで歌うことになった中山美穂さんです。変わらぬ歌声を披露する一方、もう一つ彼女の想いを込めた仕掛けを施していました。

中山美穂を見つめる国民の態度

『FNS歌謡祭』は、フジテレビが「これだけは自信満々なんです」と胸を張るコンテンツだが、「意外なコラボが沢山!」と胸を張りすぎると、やっぱり「そんなに意外じゃないよ」と醒めた声が向かう。個人的に今年は玉置浩二の不在が痛かった。誰とでも肩を組んだりハグしたがる玉置を横にして体がこわばる徳永英明、といった瞬間を見届けてこその『FNS歌謡祭』という私見。おおよその感情が抜け切った草彅剛のMCが、音楽そのものの邪魔をしない巧妙な低温度だったと気付いたのも、程良いテンションでテキパキこなす今年のMC・渡部健を見届けた後だった。

いくつかの不安要素をはね除けるように、今年の目玉としてブッキングされたのが、18年振りにテレビで歌声を披露する中山美穂だった。こういった長いブランクを経た女性歌手が復帰する時には、横軸に「歌声の維持」、縦軸に「美貌の維持」という、なかなか失礼な座標軸が用意されることになる。昨年の紅白歌合戦での中森明菜は、座標軸を用意する以前に「そもそも大丈夫なのか」という大きな不安を全国民が共有したわけだが、今回は、その手の一致団結はなく、「私はこう思った」と座標軸にバラバラと視聴者の見解が放たれるだけになった。

中山美穂とパリの冷気

中山美穂と出会った辻仁成が第一声として放ったとされる「やっと会えたね」は、すっかり失笑気味に記憶されているが、それに呼応してきた中山美穂のポエミーな感性はあまり語られていない。フランスでの生活を綴った彼女のエッセイ集『なぜならやさしいまちがあったから』(集英社文庫)では、彼と初めて目が合った瞬間をこのように綴っている。「衝撃がないのに驚いて、初めて会ったのに深く知っているような気がして、寒くもないのに心が震えて、落ち着きのない状態になってしまった」。彼と出会ってから初めての誕生日、薔薇の花束をもらった彼女は、その中の1本を、2人で空けたシャンパンに挿した。その薔薇はボトルの底に根を広げて、茎から芽を出し、花を咲かせたという。

中山美穂の文章はなかなか巧みだ。「パリでの散歩は子供のころの散歩の続きのようです」なんてサラリとは書けない。パリに移住をした理由を、日本での生活が窮屈だったからとは書かない。でもその腹心を漂わせておきたいのか、別の角度から指摘する。パリで生活をしていると、日本の女性の足音に特徴があることに気付くという。背後から聞こえてくる足音、「私を通り越した足早の女性はおもむろに振り返ります。その時に道に迷った風なお芝居をしながら、私を確認しているようです」「その演技力にはかなわないと思ってしまいます。私は負けじと大きな微笑みを用意します」。

日本にいると色んな人に追われて大変だから、などと書くよりも、この描写を記すほうが根深い恨みを感じる。実は来月パリに行くことになっているのだが、あちらに住む知人から「1月なんてもう石畳が凍るように冷えてるからねー」などと情報をもらっていたものの、まぁ大したことないだろう、と舐めたままでいた。しかし、中山美穂の筆致からは、パリの冷気が確かに伝わってくるのだった。

中山美穂は「作詞」ではなく「作詩」
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コメント

hiroko_taguchi ちなみに去年の年末に投下されたこの記事が個人的にワダアキ考2015年ベスト。 3年以上前 replyretweetfavorite

SilenceGandhi わからないのですが、中山美穂さんって歌手かなんかですか?あの表現力はコメディアンですよね? 3年以上前 replyretweetfavorite

0501Can #中山美穂 #miho30th #FNS歌謡祭 #世界中のの誰よりきっと #ただ泣きたくなるの #作詞 #作詩 3年以上前 replyretweetfavorite

tsunazawa69 中山美穂さんとFNS歌謡祭について書かれています 3年以上前 replyretweetfavorite